「平成バブル」と呼ばれた1990年代初頭、メディアは不動産価格の高騰を「地価狂乱」と大々的に報じ、地価を下げるべきだとキャンペーンを張った。しかし現在、東京・銀座の公示地価は坪あたり2億2000万円(2026年)に達し、平成バブル時の1億円を大きく上回る。にもかかわらず、メディアはこの事実をほとんど報じていない。不動産収益が企業の事業を支える構造が、沈黙の背景にあると指摘する声もある。
アクティビストの標的:日本企業の「含み資産」不動産
今、アクティビスト(物言う株主)が、古くから不動産を所有し、その含み益に依存する日本企業の経営にメスを入れている。アクティビストは、本業の成長が期待できない大企業に対し、戦略見直しや事業売却、コスト削減、経営陣交代などを要求する。彼らの論拠は、日本企業の資本効率の悪さにある。グローバル市場で求められる資本効率は約8%だが、多くの日本企業はこれを達成できていない。その原因の一つが、都心部の不動産だという。
アクティビストは不動産を簿価ではなく時価で評価する。東京都心部の不動産のキャップレート(投資額に対する期待利益)は約3%に過ぎず、資本効率が極めて悪い。彼らは「不動産を売却し、得た資金を本業に投資すべきだ」と主張する。もちろん、配当増加も彼らの本音だ。
サッポロHDへの具体的要求:恵比寿ガーデンプレイスなど
具体例として、ビール・酒類大手のサッポロホールディングスに対し、シンガポール系アクティビストの3Dインベストメント・パートナーズは2023年3月、子会社サッポロ不動産開発のスピンオフ(分離上場)を提案した。サッポロ不動産開発は、渋谷区恵比寿の恵比寿ガーデンプレイス(敷地面積8万3000㎡、延床面積47万8000㎡の一部)や中央区銀座のGINZA PLACEなどを所有・運営する。アクティビストは、これらの不動産事業を本業から分離・上場し、収益を本業に振り向けるよう要求。これを受け、サッポロは2024年2月にサッポロ不動産開発への外部資本導入を決定した。
アクティビストの背後に外資系不動産ファンド
こうしたアクティビストの背後には、外資系不動産投資ファンドが存在する。彼らはアクティビストと連携し、日本企業の不動産売却を促し、優良物件を取得している。日産自動車は本社ビルを970億円で売却、電通は2680億円で本社ビルを手放した。これらは「静かなる占領」と評される現象で、外資マネーが日本の都心不動産を次々と買い占めている。
日本企業の不動産売却は今後も加速するとみられる。アクティビストの圧力に加え、企業自身も資本効率改善のため、含み益のある不動産を現金化し、本業投資や株主還元に充てる動きが強まっている。一方で、外資に渡る優良物件が増えれば、日本の不動産市場の主導権が海外に移る懸念も指摘される。



