世界的な半導体不足が自動車生産に深刻な影響を与えてきたが、エンジン制御などに使われる汎用半導体の供給状況は急速に改善している。東洋経済の取材によると、自動車メーカーや部品メーカーの関係者は「エンジン向け半導体の不足はほぼ解消した」と口を揃える。一方で、電気自動車(EV)シフトの加速に伴い、パワー半導体など新たな需要が急増しており、供給のひっ迫が懸念されている。
半導体不足の経緯と現状
2020年以降、新型コロナウイルスのパンデミックによる需要変動や地政学的リスクを背景に、半導体の需給は世界的にひっ迫。自動車業界では、特にエンジン制御ユニット(ECU)やパワートレイン系の半導体が不足し、国内外で減産を余儀なくされた。しかし、2023年後半から状況は一変。東洋経済の調査では、エンジン部品向けの半導体供給は正常化し、在庫水準も回復しているという。
EVシフトがもたらす新たな需要
エンジン向け半導体の不足が解消に向かう一方で、EV向けのパワー半導体や車載センサーの需要は増加の一途をたどる。特に、EVの航続距離や充電性能を左右するSiC(炭化ケイ素)パワー半導体は、供給が需要に追いつかず、自動車メーカーは確保に躍起になっている。ある部品メーカーの幹部は「EVシフトが想定以上に早く進んでおり、半導体の調達戦略は根本的に見直す必要がある」と指摘する。
部品メーカーと自動車メーカーの対応
こうした変化を受け、自動車メーカーは半導体の内製化や長期契約を進めている。トヨタ自動車はデンソーと協業し、車載半導体の設計・生産体制を強化。ホンダも半導体メーカーとの直接取引を拡大している。また、部品メーカーはエンジン部品からEV部品への生産シフトを加速。ただし、エンジン車の需要が完全になくなるわけではなく、過渡期の需給バランスをどう調整するかが課題となっている。
今後の見通し
半導体不足の解消は自動車生産の正常化に寄与するが、EVシフトに伴う半導体需要の構造変化は長期的な課題を突きつける。業界関係者は「半導体の安定調達は競争力の源泉になる」と強調し、各社が戦略的な投資を急いでいる。東洋経済の分析では、2025年以降、SiCパワー半導体の供給能力が大幅に増強される見通しだが、需要の伸びがそれを上回る可能性も指摘されている。



