エンジン部品からEV部品へ、事業転換の波
世界的なEVシフトの加速により、自動車部品業界に大きな変革の波が押し寄せている。従来のエンジンやトランスミッションなど内燃機関向け部品を主力としてきた大手部品メーカーは、電動化対応部品への事業転換を迫られている。この流れは、部品点数がエンジン車比で約3分の1に減少するEVの特性から、部品メーカーにとっては収益源の縮小を意味する。
特に、デンソーやアイシン、住友電工など、エンジン関連部品で高いシェアを誇ってきた企業は、EV向けのインバーターやモーター、バッテリー関連部品へのシフトを加速させている。デンソーは、2025年までに電動化関連の売上高を1兆円規模に引き上げる目標を掲げ、研究開発費の約7割を電動化に振り向ける方針だ。
ガソリン車部品の需要減少、雇用への影響も
一方で、エンジン部品の需要減少は、部品メーカーの雇用にも影響を及ぼし始めている。大手部品メーカーの国内工場では、エンジン部品の生産ラインの縮小や人員の再配置が進んでいる。ある部品メーカーの幹部は、「ガソリン車の生産が減れば、エンジン部品の需要は確実に減る。工場の人員をEV部品の生産に振り向ける必要がある」と語る。
しかし、EV部品はエンジン部品に比べて労働集約度が低く、同じ生産量でも必要な人員が少なくなる傾向がある。このため、雇用のミスマッチが生じる可能性も指摘されている。経済産業省の試算によれば、2030年までに自動車部品業界で約10万人の雇用が影響を受ける可能性があるという。
新たな競争と協業の模索
EVシフトは、自動車部品業界の競争構造も変えつつある。従来のエンジン部品では、長年の取引関係や技術力で築かれた系列が強みだったが、EV部品では新たなプレーヤーが参入しやすい。例えば、半導体メーカーや電子部品メーカーがEV向けのパワーモジュールやセンサーで存在感を増している。
こうした中、従来の部品大手は、異業種との協業やM&Aを積極的に進めている。アイシンは、半導体メーカーのルネサス エレクトロニクスとEV向けの統合制御システムを共同開発するなど、新たな連携を模索する。また、住友電工は、EV用ワイヤーハーネスの軽量化技術で競争力を高める一方、電池材料の開発にも注力している。
生き残りをかけた投資競争
部品メーカーの間では、EV関連への投資競争が激化している。デンソーは、2021年度から2025年度までの5年間で、電動化関連に1兆円を超える設備投資を計画。アイシンも、EV向けの駆動ユニットの生産能力を2025年までに現在の3倍に引き上げる方針だ。
しかし、巨額の投資は中小部品メーカーには負担が重く、淘汰が進む可能性もある。ある業界アナリストは、「EVシフトは部品メーカーの生き残りをかけた競争だ。技術力と資金力のある企業だけが勝ち残る」と指摘する。実際、エンジン部品に特化していた中小メーカーの一部は、事業の縮小や廃業を余儀なくされている。
一方で、EVシフトは新たなビジネスチャンスも生み出している。熱マネジメントシステムや車載ソフトウェアなど、EVならではの部品・システムの需要が拡大しており、ここに活路を見出す企業も現れている。部品大手の生き残りをかけた戦略は、今後さらに注目を集めることになりそうだ。



