電気自動車(EV)シフトが世界的に加速する中、エンジンやトランスミッションなど内燃機関関連部品を主力としてきた自動車部品メーカーは、かつてない事業構造の転換を迫られている。特にトヨタ自動車の系列下にある部品メーカーは、同社の電動化戦略に沿った変革が急務となっている。
エンジン部品需要の減少とサプライヤーへの影響
国際エネルギー機関(IEA)の予測によれば、2030年までに世界の新車販売に占めるEVの割合は30%以上に達すると見込まれている。これに伴い、エンジンや燃料噴射装置、排気系部品などの需要は急速に縮小する。トヨタ系部品メーカーであるデンソーは、2025年度までに電動化関連部品の売上高を2020年度比で倍増させる目標を掲げる。同社の担当者は「エンジン部品から電動化部品へのシフトは避けて通れない。研究開発投資を積極的に行い、競争力を強化する」と語る。
アイシンは新領域へ多角化
同じくトヨタ系のアイシンは、従来のトランスミッションやブレーキ部品に加え、EV向けのeアクスル(電動駆動モジュール)や熱マネジメントシステムなど新領域への展開を加速。2023年度の電動化関連売上高は前年度比30%増の約4000億円に達した。アイシンの広報担当者は「2030年までに電動化関連売上高を1兆円に引き上げる計画だ。エンジン部品の縮小を新事業で補う」と説明する。
部品メーカーの生き残り戦略
エンジン部品メーカー各社は、既存技術の応用やM&Aを通じて生き残りを模索している。例えば、燃料噴射技術を水素エンジンや燃料電池向けに転用する動きや、排気熱回収技術をEVのヒートポンプシステムに応用する事例が増えている。また、ベンチャー企業への出資や買収により、ソフトウェアや半導体分野の技術を取り込む動きも活発だ。
トヨタの電動化戦略とサプライチェーンの再編
トヨタは2026年までにEVの世界販売台数を150万台に引き上げる計画を発表。これに伴い、部品メーカーに対する調達方針も変化している。トヨタの調達本部長は「サプライチェーン全体で電動化に対応する必要がある。従来のエンジン部品メーカーにも、新しい技術提案を期待している」と述べる。一方、系列部品メーカー以外の企業もEV部品市場に参入しており、競争は激化している。
雇用と地域経済への影響
エンジン部品の生産縮小は、関連工場が立地する地域の雇用にも影響を及ぼす。愛知県など自動車産業の集積地では、部品メーカーの従業員を電動化関連部門に再配置する動きが進んでいる。しかし、すべての労働者が新しい技術に対応できるわけではなく、リスキリング(学び直し)が課題となっている。経済産業省は、自動車部品産業の構造転換を支援するため、補助金や税制優遇措置を拡充する方針だ。
今後の展望
EVシフトの加速は、自動車部品メーカーに試練をもたらす一方で、新たなビジネスチャンスも生み出している。電動化関連部品の市場規模は2030年には現在の3倍以上になると予測される。デンソーやアイシンに加え、他のトヨタ系部品メーカーも電動化対応を急ぐ。今後、業界再編や技術提携がさらに進むとみられる。



