建設費の高騰が止まらない。その背景には資材価格の上昇だけでなく、深刻な施工能力不足が横たわっている。再開発や公共工事の現場では入札が成立しないケースが相次ぎ、プロジェクトの停滞が懸念されている。
欧米で普及する「オープンブック方式」
欧米では、工事原価を公開した上で適正な利益を加える「オープンブック・コスト+フィー」方式が一般的だ。インフレリスクは発注者が負担するのが標準で、日本の商慣習とは大きく異なる。不動産協会と日本建設業連合会(日建連)は今年4月に協議会を設置し、6月1日から建設費高騰問題の話し合いを開始した。焦点は、インフレリスクを発注者と受注者でどう分担するかにある。
入札不調が9割超の実態
公共工事では、国土交通省が設計労務単価を引き上げ、事業費の予定価格に反映してきた。国交省直轄工事には物価スライド条項が組み込まれ、インフレリスクに対応可能だが、発注者に増額の必要性を認めてもらう必要がある。地方自治体の工事では、議会承認が必要な場合も少なくない。
問題は、国の物価調査で示される賃金や資材価格のデータが過去の実績値である点だ。これを基に積算した予定価格では、将来のインフレリスクをカバーできない。その結果、応札者が1社もない「入札不調」や、応札者がいても予定価格を下回らず落札者が出ない「入札不落」が増加している。
日本総合研究所が今年5月に発表した自治体アンケート調査によると、過去3年間に入札の不調・不落を経験した自治体は9割を超えた。不調・不落の理由は「価格が合わない」が約8割を占めている。日本総研は「入札の公告前から官民が十分に対話し、市況を踏まえた予定価格を設定することが肝要」と提言している。
施工能力低下と生産性向上の課題
建設業の施工能力は、人口減少による人手不足で今後も低下が見込まれる。これが日本の経済成長のボトルネックにならないためには、建設業がデジタル技術やAIを活用して労働生産性を向上させる環境整備が不可欠だ。建設市場の需給バランスを改善し、建設費のインフレ圧力を緩和できるかが問われている。
後編記事「建設業はなぜ人手不足から抜け出せないのか…生産性を上げても技能者が報われにくい日本型発注の限界」でさらに検証する。



