日本経済は長らく「失われた30年」と呼ばれる低成長とデフレに苦しんできたが、政府は新たな成長戦略を掲げ、この状況から脱却を図る。岸田文雄首相は「新しい資本主義」の下、デジタル化、グリーン投資、人材育成の3つを重点分野に据え、2025年までに名目GDP600兆円を達成する目標を明らかにした。
デジタル化で生産性向上
政府は、企業のデジタル化を促進するため、中小企業向けの補助金や税制優遇を拡充する。特に、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進のための投資額を2023年度までに1兆円規模に引き上げる方針だ。これにより、生産性を年平均2%向上させることを目指す。
経済産業省の試算によると、日本のデジタル化の遅れはGDPで年間約20兆円の損失をもたらしている。この差を埋めることが急務となっている。
グリーン投資で新市場創出
環境分野では、2050年カーボンニュートラル達成に向け、官民合わせて今後10年間で150兆円の投資を計画。再生可能エネルギーや水素、蓄電池などの技術開発を支援し、新たな市場と雇用を創出する。
「脱炭素は成長の機会だ」と岸田首相は述べ、環境対策と経済成長の両立を強調した。政府は、この分野で2030年までに90兆円の経済効果と140万人の雇用創出を見込む。
人材育成とリスキリング
少子高齢化による労働力不足に対応するため、政府はリスキリング(学び直し)支援に3年間で1兆円を投じる。特に、デジタルやグリーン分野での人材育成を強化し、2025年までに100万人のデジタル人材を育成する目標を掲げる。
「人への投資なくして成長なし」と、経団連の十倉雅和会長は述べ、企業も積極的にリスキリングに取り組むよう呼びかけている。
課題と展望
しかし、これらの戦略には課題も多い。財政規律の緩みや、規制改革の遅れ、賃金上昇の鈍さなどが指摘されている。第一生命経済研究所の永濱利廣首席エコノミストは「目標達成には、政府の旗振りだけでなく、企業や労働者の意識改革が不可欠だ」と述べる。
日本経済が真の成長軌道に乗るかどうかは、これらの政策を実行に移し、成果を上げられるかどうかにかかっている。



