東京メトロで最も乗降人員が少ない駅、それが南北線の西ケ原駅だ。1日あたりの乗降人員は約1万人(2019年度)で、東京メトロ全179駅中ワースト。この駅がある東京都北区西ケ原は、東京大空襲で甚大な被害を受けた歴史を持ち、戦後の再開発が十分に進まなかったため、現在も密集市街地が広がっている。
駅周辺の現状:国立印刷局と緑豊かな公園
西ケ原駅を出ると、目の前には国立印刷局東京工場がそびえる。ここでは日本銀行券や収入印紙が製造されており、厳重な警備が敷かれている。駅前にはコンビニや飲食店が数店ある程度で、商業集積はほとんど見られない。本郷通り沿いには中層マンションが建ち並ぶが、高くても10階前後だ。
一方、緑豊かな滝野川公園や、7万3000平方メートルの敷地を持つ飛鳥山公園が近くにあり、住民の憩いの場となっている。飛鳥山公園は桜の名所としても知られ、江戸時代から続く歴史ある公園だ。
商店街の様子:染井銀座と霜降銀座
西ケ原駅から南へ少し離れた駒込との境には、本郷通りと平行する形で商店街が連なる。西ケ原商栄会のふれあい通りは、シャッターを下ろした商店や新しい戸建てが目立ち、落ち着いた住宅街の雰囲気だ。しかし、染井銀座商店街と霜降銀座商店街は地面のタイルが整備され、現役の店舗も多く、活気がある。染井銀座商店街にはスーパーやサンドラッグ、キャンドゥがあり、人通りも多い。霜降銀座商店街は狭い道に下町情緒あふれる商店が並ぶ。
歴史的背景:先土器時代から人が暮らす西ケ原
西ケ原は先土器時代から人が暮らしていたとされる地域で、縄文時代の遺跡も発見されている。しかし、1945年の東京大空襲で焼け野原となり、戦後は復興が優先されたため、計画的な再開発が行われなかった。その結果、木造密集地域が残り、現在も防災上の課題を抱えている。
ショッピングセンター研究家でライターの坪川うた氏は「西ケ原は大空襲の被害が大きく、戦後も再開発の優先順位が低かった。そのため、東京メトロの駅でありながら、周辺は昔ながらの街並みを残している」と指摘する。
今後の展望:再開発の可能性は
北区は2022年に「北区都市計画マスタープラン」を策定し、西ケ原地区を含む地域の防災性向上や住環境の改善を掲げている。しかし、大規模な再開発計画はまだ具体化していない。駅の乗降人員が少ない理由として、周辺に大規模な商業施設やオフィスビルが少ないこと、駅前が国立印刷局という特殊な施設に面していることが挙げられる。
西ケ原駅の一日平均乗降人員は約1万人で、これは東京メトロ全体の平均(約10万人)を大きく下回る。今後、再開発が進めば、駅周辺の活性化が期待されるが、歴史的な背景を考慮した慎重な計画が必要とされる。



