山陽新幹線・新神戸駅に直結する商業施設「コトノハコ神戸」は、1988年の開業時には192店舗を擁する西日本有数の大型ショッピングセンターだったが、2026年6月時点で稼働店舗は約27店舗と、開業から37年で約8割のテナントが消えた。新幹線駅直結で観光地にも近い好立地ながら、観光客やビジネス客は素通りし、通過点と化している。ライターの坪川うた氏が現地を取材し、その理由を4つの要因に整理した。
迷宮コンセプトが迷路に
1つ目の要因は、複雑な館内構造だ。コトノハコ神戸は地下3階から地上3階の6フロアのうち、現在稼働しているのは4フロアのみ。通路が複雑に入り組み、西館と東館をデッキで行き来する必要があるため、目的の店舗を見つけにくい。開業当初は「ラビリンス(迷宮)&ネバーシース(とまらない)」をコンセプトとしていたが、日本ショッピングセンター協会は1989年の時点で「迷宮のため、お客の寄りつかないスペースができた」と課題を指摘していた。現在は地上1階の大半が白い仮囲いに覆われ、迷路感がさらに増している。
観光客にもビジネスマンにもスルーされる
2つ目の要因は、駅直結でありながら観光客やビジネス客の流れを捉えきれていない点だ。新神戸駅は新幹線の停車駅だが、在来線は通っておらず、利用者の多くは通過目的。駅前には異人館街などの観光地があるが、コトノハコ神戸で買い物や食事を楽しむ人は少ない。筆者が現地で観察したところ、シャッターが閉まったままの空き区画が目立ち、賑わいはほとんど感じられなかった。
運営主体の頻繁な変更
3つ目の要因は、運営主体が何度も変わったことだ。1988年に「新神戸OPA」として開業した後、2010年に「さんちか」を運営する神戸地下街が取得し「さんちか新神戸」に。2015年には大和ハウスグループが取得し「コトノハコ神戸」としてリニューアルしたが、その後も運営は安定せず、テナントの入れ替わりや撤退が続いた。運営方針の一貫性を欠いたことが、集客力の低下に拍車をかけたとされる。
「屈指の繁華街」との絶妙な距離感
4つ目の要因は、神戸の中心繁華街・三宮との距離だ。新神戸駅から三宮までは徒歩15分ほどで、地下鉄やバスでも数分。三宮には百貨店や飲食店が集積しており、コトノハコ神戸でわざわざ買い物をする必要性が薄い。坪川氏は「駅直結であることが逆に、通過点としての性格を強めてしまった」と指摘する。
「通過点」になる運命だった
新幹線駅直結の商業施設は、そもそも「通過点」としての宿命を抱えている。東京駅や新大阪駅のような大規模ターミナルとは異なり、新神戸駅は乗降客数が限られる。2025年度の新神戸駅の1日平均乗車人員は約1万2000人で、新横浜駅の約4分の1程度。この限られた人流をモール内で滞留させるには、強力な集客力が必要だが、コトノハコ神戸はそれを実現できなかった。
「新○○駅」が持つ立地の弱点
坪川氏は「新神戸駅に限らず、『新○○駅』直結の商業施設は同様の課題を抱えやすい」と分析する。新幹線駅は都市の中心部から離れていることが多く、駅利用者の多くは目的地へ直行するため、駅ビルでの消費行動が起きにくい。コトノハコ神戸の事例は、好立地に見えて実は集客に不利な「新幹線駅直結モール」の典型例と言える。
開業から37年、店舗数が8割減ったコトノハコ神戸。現在も空き区画が目立つが、再活性化の兆しは見えていない。駅直結の利便性をどう活かすか、抜本的な対策が求められている。



