マンション老朽化で「隠れた空室」増加、管理費滞納や水漏れ…資産価値低下の懸念
マンション老朽化で「隠れた空室」増加、管理費滞納や水漏れ…資産価値低下の懸念

マンションが老朽化するにつれ、空室は増える。高齢者の所有する住宅の相続が進まず、問題が生じるのは戸建ての「空き家」と同じだが、マンションは専有部分の漏水や管理費の滞納により、建物全体が管理不全に陥るという特有のリスクをはらむ。

築50年マンション、所有者不明の空室

大阪府北部の田園地帯。外壁に複数のひび割れが入った築50年の3階建てマンション(9戸)には、持ち主不明の空室が1部屋ある。

「元々静かなマンション。空室があることをずっと知らなかった」と、祖母から相続し、約10年暮らす管理組合理事長の男性(48)は話す。所有者を調査した大阪府マンション管理士会副会長の山本政信さん(76)は、「空室の不動産登記は30年近く同じ人物のままで、存命かもわからない。戸建てと違い、マンションの空室は外から気づかれにくい」と指摘する。

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修繕積立金はこれまで集められておらず、通常十数年ごとに実施される大規模修繕は半世紀の間、一度も行われていない。管理費は1戸当たり月5000円で、貯蓄は100万円余り。今はできる範囲で外壁や水漏れの修繕をしているという。

「祖母との思い出もあって相続したが、こうした問題があるとは考えていなかった」と男性は言う。

公費で解体されたマンションも

空室を抱えた建物が老朽化すると、適切に修繕がされず、自治体が公費で解体せざるを得ない事態にもなる。滋賀県野洲市は2020年1月、倒壊の恐れがあるとして、1972年築の「美和コーポB棟」(鉄骨3階建て)を空家対策特別措置法に基づく行政代執行で解体した。

9戸全てが十数年前から空室で、築40年頃には階段が崩れ、大阪北部地震で壁面も崩落していた。同市が解体に要した費用は、約1億1800万円。1戸当たりでは約1300万円で、一部は回収できたものの協議中の所有者も多く、1戸は所有者不明のため請求すらできなかったという。

東京都市大特任教授の斉藤広子さんは「空室の所有者が部屋を放置すれば、水漏れや必要な工事に対応できず、維持管理が適正に行えなくなって、いずれ管理不全に陥る可能性がある。問題が表面化する頃には事態がかなり深刻化している恐れがあり、マンション全体の寿命を縮めることや資産価値の低下、地域の環境悪化につながる」と警鐘を鳴らす。

都市部でも無関係ではない空室問題

マンションの「空室」は、不動産価格の高騰が続く都市部でも無関係ではない。大阪市北部の11階建てマンション(築49年、2棟計約300戸)は、大阪・キタのビジネス街にも電車で15分余りの好立地で、郵便ポストには「売却物件募集中」のチラシが毎日のように入る。

それでも住人の約半数が高齢者で、約20戸が空室だ。所有者と連絡はつくものの、数か月分の管理費の滞納を繰り返す部屋もあり、回収に手間がかかる。

ある一室は数年前に住人が死亡後、相続人が決まらず、連絡のつく親族も管理費などの支払いに一度も応じていない。約2年間の滞納額は50万円以上で、管理組合理事長を務める住人の男性(65)は「売れば買い手が見つかるので、いっそ早く売却してほしいのだが……」とこぼす。

大規模修繕やマンション管理規約の見直しを進めるなど、マンションの『老い』に向けて準備してきたつもりだった。それでも、男性の声は暗い。「ガス漏れや汚水漏れも相次いでいる。簡単には解決できない課題が一気に噴出し、まるで『時限爆弾』みたいだ」

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新制度と住民の取り組み

所有者不明の空室対策として、改正区分所有法の施行(4月)に伴い、マンションに特化した財産管理制度が新たに創設された。「所有者不明専有部分管理制度」は、所有者の死亡後、相続人の所在がわからない場合などを想定。管理組合などが裁判所に申し立て、弁護士や司法書士らから管理人が選定される。管理人は裁判所の許可を得た上で、所有者の同意がなくても部屋を売却することが可能だ。

所有者の所在がわかっていても、連絡に応じないような場合に適用される制度もできた。共用部分や専有部分の管理不全により周囲に危険を及ぼす恐れがあれば、選任された管理人が窓の破損や水漏れなどの応急処置をすることができる。ただし所有者不明のケースと異なり、全面的な改装などには裁判所の許可が必要で、部屋の売却は所有者の同意を得なければならない。

来年、2回目の大規模修繕を迎える大阪市のマンションに住む男性(83)は、築25年を過ぎ、総会を開いても5、6人しか集まらなくなったと話す。管理会社任せの人が増えて悲しいとし、入居当初は住人同士の勉強会を作って管理会社と管理費を交渉したり、大阪市マンション管理支援機構のセミナーに通ったりした。勉強会のメンバーも亡くなっていき寂しい限りだが、セミナーなどでの勉強は続けている。

若い世代は忙しいだろうが、マンションは自分たちの家だ。誰かがなんとかしてくれるわけではない。工事費の高騰や大型設備の更新など、これから色々問題が出てくる頃で、住人自身が学ぶことが大切だと思う。