マンション大規模修繕、積立金不足で1.5億円借入…管理組合は「零細企業の経営のよう」
マンション修繕、積立金不足で1.5億円借入…管理組合の苦悩

大阪市の築42年のマンションで、老朽化による漏水事故が相次ぎ、排水管更新工事の見積額が修繕積立金を1億円以上も上回る事態が発生した。管理組合は積立金を2倍に増額し、住宅金融支援機構から1億5000万円を借り入れて工事を完了させた。理事長を務めた男性(69)は「管理組合運営は零細企業の経営のようだ」と振り返る。

突然の理事就任、積立金は国の平均の半分以下

2023年秋、男性は自室のドアを開けると、管理組合の理事長(当時)が立っており、「くじ引きの結果、次の役員に決まりました」と告げられた。約30年前に購入したこのマンションは2棟約280戸で、総会に出席したことは一度もなかったという。

マンションでは約10年前から漏水事故が増加し、復旧中に引っ越しを余儀なくされる住人も出るなど事態は深刻化。しかし当時の修繕積立金は約5000万円で、排水管更新工事の見積額に1億円以上足りなかった。

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男性は大阪市の相談窓口や国の指針を調べ、原因が修繕積立金の徴収額にあったと判明。1戸当たり平均約6900円を毎月徴収していたが、これは国の示す平均値の半分以下だった。

説明会で紛糾、借入と増額を総会で承認

住人への説明会は管理会社や過去の理事の責任を問う声で紛糾したが、最終的に修繕積立金を2倍にし、住宅金融支援機構から1億5000万円を借り入れることが総会で承認された。工事は昨年終了し、返済計画や次回の大規模修繕の見通しも立て、適切な管理計画をもつマンションとして市に認定された。

男性は「針のむしろのような日々もあったが、今まで何も関わってこなかった罪滅ぼしのつもりでやってきた」と語る。

物価高で修繕費が高騰、積立金不足は全国的な課題

国土交通省の2023年度マンション総合調査では、分譲マンションの36.6%で積立額が計画より不足。一般財団法人「経済調査会」によると、2026年の1戸当たり平均修繕費は156万円で、2013年の1.7倍に達した。住宅金融支援機構の「マンションすまい・る融資」は2025年度、融資額が前年度比6割増の406億円と過去最高を記録した。

スマート修繕が2月に実施した調査では、分譲マンション所有者531人のうち47.3%がこの5年で値上がりを経験し、うち68.5%が「家計に影響が出ている」と回答。食費や光熱費を見直す世帯も目立った。

マンション管理士の重松秀士さんは「管理組合はおおむね5年ごとに長期修繕計画を見直し、積立金不足がないか確認すべきだが、実際には多くのケースでいざ工事という時に資金が足りず大騒ぎになる」と指摘。「建築コストの上昇などで値上げはやむを得ない状況だが、払えなくなり引っ越す人も出るだろう」と話す。

築30年マンションの葛藤、資金計画の見直し迫られる

大阪府北部の築30年マンション(約60戸)では、今年、管理会社から雑排水管の更新工事が提案された。費用は5000万円以上で、予定していた大規模修繕の資金が枯渇する恐れがあるとして、修繕委員会で半年以上議論を重ねてきた。

定期清掃で管内に異常が見つかったが、検査の結果、点検業者から「あと数年は猶予がありそうだ」との説明を受けた。新築時から住む女性(61)は「すぐに工事となれば大変なことになっていた」と話す一方、「先のことを考えれば、楽観はできない」と語る。

同世代の住人が多く、ここ十数年で積立金を2倍に増額してきたが、近い将来の工事には資金計画の見直しが必須となる。女性は「戸数も多くないので、すぐに数千万円を用意できるわけではない。まだローン返済中の人もいる。少しでも長く雑排水管に持ちこたえてほしい」と訴える。

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資産運用で積立金の目減りに備える動きも

国土交通省は修繕積立金のガイドラインを策定し、階数や広さに応じた平均額を示している。新築マンションでは数年おきに値上げする「段階増額積立方式」が多いが、国が推奨するのは「均等積立方式」だ。

物価高による積立金の目減りに備え、資産運用を行う管理組合も増加。住宅金融支援機構の債券「マンションすまい・る債」の今年度応募組合数(速報値、8月末現在)は3294組合で前年同期比1.9倍に。4月に10年満期時の年平均利率が0.525%から2.0%に引き上げられた影響もあるとみられる。ただ、資産運用に忌避感を持つ住人もおり、合意形成が難航することもある。

大阪府豊中市の女性(60)は、神奈川県から移住し、築18年のマンションを選んだが、住民総会で「なんでも管理会社任せの雰囲気」にショックを受けたという。長年住んだ神奈川のタワーマンションでは積立金の運用が常識だったため、「インフレが続く中で、積立金が目減りしないように『マンションすまい・る債』などの信頼性の高い債券で運用すべきだと思うが、今のマンションでは嫌がる住人の声が大きく議論が進まない」と話す。