コンビニエンスストア業界の大手2社・セブンイレブンとローソンで、約30年にわたり2000店の出店を担当、全国あらゆる地域の現場で出店と運営、立て直しを手掛けてきた「リアル店舗開発のプロフェッショナル」石井昭人さんの著書『出店戦略の最強技法』(日本能率協会マネジメントセンター)より、一等地でもつぶれるお店、うまくいくお店は何が違うのか一部抜粋・編集してお伝えします。
都心の一等地でも、店は平気でつぶれる
「都心の一等地に出店できれば、さすがに大丈夫だろう」。出店を考えたことがある人なら、一度はそう思ったことがあるはずです。人通りが多い、知名度もある、家賃も高い――それだけ条件がそろっていれば、失敗するほうが難しそうに見えます。
しかし現実には、都心の一等地でも、店は驚くほど簡単につぶれます。しかもその多くは、「立地が悪かった」わけではありません。むしろ、条件としては申し分ない場所です。
では、なぜ続かないのか。理由はシンプルで、「立地が良く見えること」と「商売が成り立つこと」は、まったく別だからです。
人の数と立ち寄る心理は別物だった
例えば、こういう状況があります。ターミナル駅の改札を出てすぐの場所に、テイクアウト専門の店が入りました。乗降客数は申し分なく、視認性も高い。家賃は高めでしたが、「これだけ人が通れば大丈夫」という判断でした。しかし蓋を開けると、そこを通る人の大半は電車に乗ること自体が目的でした。急いでいる。手は荷物でふさがっている。立ち止まる理由がない。人の数と、立ち寄る心理は、まったく別物だったのです。結果として、一日に必要な客数を確保できず、高い家賃だけが毎月確実に出ていきました。
別のケースでは、大型商業施設の一角にサロン系の店を出したオーナーがいました。施設全体への来客数は多く、認知はすぐに取れました。しかし周囲は常に人が行き交い、落ち着かない、サロンに来た人が「また来たい」と感じる環境ではありませんでした。立地の良さが、業態の邪魔をしていたのです。
どちらも、立地が悪かったわけではありません。問題は、その場所を通る人の「行動の意味」と、自分の商売に必要な「使われ方」が、最初からかみ合っていなかったことです。人が多い場所ほど、店は常に比較されます。コストも高い。似たような店、もっとわかりやすい店、すでに選ばれている店が並ぶ中で、「なぜこの店なのか」が伝わらなければ、選ばれません。つまり、立地が良く見えるほど、自然に売れるのではなく、選ばれる理由が、より厳しく問われるということです。
「条件は悪くないのに、続かない店」の共通点
一方で、長く続いている店を見ると、必ず別の要因を持っています。立地条件そのものではなく、「誰に、何を、どんな価値として提供しているのか」がはっきりしている。だから、多少条件が厳しくても、選ばれ続けます。立地は、あくまで条件の一つにすぎません。それだけで店が続くほど、商売は単純ではない。この事実を受け入れない限り、出店判断は何度でも同じところでつまずきます。
条件は悪くない。人通りもあり、立地の説明もつく。それなのに、思ったほど売り上げが伸びず、やがて苦しくなっていく店があります。こうした店に共通しているのは、「人が来ない」ことではありません。来ているのに、選ばれ続けていないという点です。
たとえば、こんな状況があります。商業施設の一角に出店した店が、開業から数カ月は順調に見えていました。場所は悪くない。通る人も多い。実際、レジには一定数が並びます。しかし、来店データを細かく見るとリピーター比率がとても低いことに気づきます。来ているのは、「たまたま通りかかった人」ばかりです。一度来てくれた人が再来店してくれない。なぜか。期待したほどの魅力がなかったから、ただそれだけです。入りやすいから入った。でも、次にくる理由が見当たらなかった。これは集客の問題ではなく、店の定義の問題です。
お客様は無意識のうちに、「なぜここに入るのか」を判断しています。それにもかかわらず「立地がよさそうだから」「人通りがあるから」という前提だけで出店すると、店の中身ではなく条件に頼った状態になります。逆に、条件が厳しい場所でも続く店は「何を提供する店なのか」「誰に、どう使われる店なのか」が定まっています。だから、日々の改善や修正がブレません。どこを直すべきか。何を守るべきか。その判断ができるからです。
出店で最初に決めるべきなのは、立地ではありません。自分は何の商売をやるのか。それは誰に使われるのか。この土台です。



