レアアース確保の陰で膨らむトリウム、日本は「使うだけ」の国でよいのか
レアアース確保の陰で膨らむトリウム、日本は使うだけの国か

日本政府はこの夏、グリーンランドのレアアース資源調査を開始する。成功の鍵を握るのは、レアアースに同伴するトリウムの対処だ。トリウム熔融塩国際フォーラム理事の亀井敬史氏は、これまで定性的な傾向を述べてきたが、今回は定量的な分析を提示する。

レアアース生産とトリウム蓄積の定量分析

各国・地域のレアアース年間生産量の推移を見ると、中国が1990年代以降急拡大し、2010年前後には市場占有率97%に達した。現在は約7割だが、年間生産量は30万トン近くに及ぶ。アメリカとオーストラリアは2012年から年間数万トンを生産。グリーンランドは2028年から年間2万トンを生産すると仮定されている。

一方、トリウム蓄積量(経年累積)の推移では、中国が1990年から急速に増加し、2050年には世界の大半を占める見込み。アメリカやオーストラリアも着実に増やしているが、特に注目すべきはインドだ。レアアース生産量は1990年代までわずかだが、トリウム蓄積量は山のように膨らんでいる。

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インドでのトリウム蓄積量増大の理由

その理由は鉱物の種類にある。インドは海岸に大量に堆積するモナザイトを主な原料としており、モナザイトはトリウム含有率が高い。一方、中国最大のレアアース産地であるバイヤンオボは、バストネサイトとモナザイトが混在する特殊な複合鉱床で、トリウム含有率は比較的低い。

インドはウラン資源が乏しいため、原子力政策の柱としてトリウム利用を推進してきた。同国はモナザイトからレアアースを抽出する際に生じるトリウムを分離・備蓄し、将来の原子力発電に活用する計画だ。この戦略的な備蓄が、トリウム蓄積量の急増を説明する。

トリウムを国家が備蓄することの意味

トリウムは核兵器への転用が困難で、安全性の高い原子力燃料として注目される。しかし、レアアース生産の副産物として生じるトリウムは、適切に管理されなければ環境リスクとなる。中国はトリウムを大量に蓄積しているが、その利用は限定的だ。

日本はレアアースのほとんどを輸入に依存し、トリウムは「使うだけ」の状態が続いている。しかし、エネルギー安全保障の観点から、トリウムを国家備蓄すべきとの議論が高まっている。亀井氏は「日本がトリウム備蓄を避けて通れない理由は、レアアース確保の安定性と、将来の原子力オプションの確保にある」と指摘する。

デンマークのトリウム関連企業2社に注目

グリーンランドはデンマーク領であり、同地域のレアアース開発にはデンマーク企業が関与する。特に注目すべきは、トリウム熔融塩炉の開発を進めるコペンハーゲン・アトミックス社と、レアアース精製技術を持つタンブリーズ社だ。

日本政府はこれらの企業との連携を模索しており、技術協力を通じてトリウムの有効利用とレアアース安定確保の両立を図る方針。しかし、グリーンランドの資源開発には環境影響評価や先住民の権利など、乗り越えるべき課題も多い。

日本の国家備蓄論の行方

現在、日本はレアアースの安定供給確保に注力しているが、トリウムの戦略的備蓄は議論の俎上に上がっていない。しかし、中国のトリウム蓄積量が圧倒的に増加する中、日本も備蓄論を真剣に検討すべき時期に来ている。

亀井氏は「トリウムはレアアース生産に伴って必然的に生じるものであり、廃棄物として扱うか資源として活かすかは政策次第だ。日本が『使うだけ』の国から脱却し、トリウムを国家戦略に組み込むべきだ」と提言する。

今後のグリーンランド調査の結果次第では、日本とデンマークの協力が加速し、トリウム備蓄を含む新たな枠組みが形成される可能性もある。

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