日本が原油輸入の大半を依存してきた中東の混乱は長引くことが避けられず、日本経済の安定的成長にはエネルギー安全保障の強化が不可欠だ。政府は包括的なエネルギー安全保障の強化策をまとめ、原油調達先の多角化やホルムズ海峡を経由しない代替パイプラインの建設支援、ナフサ確保策などを柱とした。
中東危機で露呈した脆弱性
中東危機でエネルギー輸送の大動脈であるホルムズ海峡が封鎖され、日本を含む世界経済は大混乱に陥っている。イランはホルムズ海峡の管理権を主張し、米国と鋭く対立したままだ。日本経済のこれ以上の混乱を招かないため、迅速に対策を取りまとめたことは評価できる。
中東危機で明らかになったのは、原油調達の9割以上をホルムズ海峡経由に依存していたことによるエネルギー安全保障の脆弱性だ。原油の調達先は、全体の約8割をアラブ首長国連邦(UAE)とサウジアラビアが占めてきた。
パイプライン支援と調達先の開拓
今回の強化策ではまず、UAEとサウジがホルムズ海峡を通らずに輸出するために建設する迂回用パイプラインについて、資金面などで支援する。中東の原油は安価で経済合理性に優れているが、地政学的リスクを踏まえれば、価格だけで決められない時代に入った。
パイプライン敷設に加えて、新しい原油の調達先を開拓することも重要だ。政府は、調達先をこれまでのホルムズ海峡経由から変更した事業者には、輸送費の増加分を補助する制度を創設する。今回、米国などからの輸入を増やし、7月は中東への依存度を6割程度にまで下げた実績があり、このノウハウも生かしたい。
ナフサ確保と脱炭素化の課題
また、プラスチックや化学繊維など幅広い製品の原料となるナフサの供給不安に対処することも柱の一つだ。揮発性が高いナフサそのものの備蓄は難しいため、ナフサの確保も考慮した石油の備蓄を国家として行う制度を導入することにした。
エネルギー安全保障を強化するには、化石燃料への依存を減らす脱炭素化も不可欠だ。原子力発電や再生可能エネルギーの活用を着実に進めていかねばならない。
一方、政府がガソリン価格を1リットル当たり170円程度に抑える補助金政策を続けるのは、ちぐはぐだと言わざるを得ない。ガソリン消費を増やして省エネの妨げになり、脱炭素化に逆行するため、段階的な縮小方法を検討すべきだ。



