日本銀行(日銀)は2026年6月の金融政策決定会合で、政策金利を0.75%から1%に引き上げた。これは約31年ぶりの高水準であり、家計への影響が注目される。ニッセイ基礎研究所金融研究部の福本勇樹金融調査室長は、金利上昇が家計に与える影響をシミュレーションし、得する人と沈む人の分かれ目を解説する。
金利の基礎:長期金利と短期金利の違い
金利には短期金利と長期金利がある。短期金利は満期1年未満の金利全般で、普通預金金利や定期預金金利、変動金利型住宅ローン、カードローンなどに影響する。日銀の政策金利が上がると、金融機関は短期金利を引き上げ、預金金利や住宅ローン金利が上昇する。
一方、長期金利は期間1年以上の金融商品に適用され、新発10年物国債の利回りが指標となる。長期金利は債券市場で将来のインフレや成長率を踏まえて決定され、現在は正常化の方向にある。長期金利は個人向け国債や固定金利型住宅ローンなどに影響する。
変動金利住宅ローンのリスク:返済額増加のシミュレーション
変動金利型住宅ローンを利用する家計は、金利上昇の影響を直接受ける。福本氏は、変動金利×超長期のローンでは支払利息が大きく増えると指摘する。例えば、3000万円を35年ローンで借り入れ、金利が1%上昇した場合、月々の返済額は約1万5000円増加し、総返済額は約630万円増える試算だ。
「返済額が増えていない」と感じる人もいるが、それは5年ルール(返済額が5年間据え置かれる)や125%ルール(返済額の増加が125%までに制限される)の影響で、実際には金利上昇分が後ろ倒しになっている。将来、返済額が急増するリスクがある。
金利上昇で得する家計:預金金利と個人向け国債の活用
金利上昇は預金者にとっては恩恵となる。普通預金や定期預金の金利が上昇し、利息収入が増える。また、個人向け国債の固定型も選択肢となる。長期金利の上昇に伴い、新発10年物国債の利回りが上がれば、個人向け国債の利率も上昇する。
福本氏は「家計管理を徹底すれば金利上昇は恩恵になる」と述べ、資産運用の見直しを勧める。特に、変動金利の住宅ローンを抱える家計は、金利上昇リスクを軽減するため、固定金利への借り換えや繰り上げ返済を検討すべきだ。
金利上昇リスクを軽減する方法
福本氏は、金利上昇の負担増に備えるためのバッファ(余裕資金)を確保する重要性を強調する。具体的には、変動金利型ローンを利用する場合、金利が上昇しても返済できるよう、月々の返済額を多めに設定するか、繰り上げ返済を計画的に行うことが有効だ。
また、個人向け国債の「固定型」は、長期金利の上昇局面で有利に働く。変動型(変動金利)の個人向け国債は短期金利に連動するため、金利上昇局面では固定型の方が高い利回りを得られる可能性がある。
まとめ:金利上昇局面での家計戦略
金利上昇は家計にとってメリットとデメリットの両面がある。住宅ローンを抱える家計は返済負担増に備え、預金者や投資家は金利上昇を資産形成に活用するチャンスと捉えるべきだ。福本氏は「金利の基礎を理解し、適切な家計管理を行うことで、金利上昇を味方にできる」と結論づける。



