脳内でドーパミンを作る神経細胞が減り、体を動かしにくくなるパーキンソン病。人工多能性幹細胞(iPS細胞)から作ったドーパミン神経細胞のもとになる細胞を患者の脳へ移植する治療が、実際の医療へ踏み出した。研究を率いてきた京都大iPS細胞研究所の高橋淳教授は、この治療法を「まだバージョン1だ」と語る。
条件・期限付き承認を経て保険診療へ
再生医療等製品「アムシェプリ」は今年、条件・期限付き承認を受け、薬価も決まり、保険診療で使われる段階に入った。ただ高橋氏は、これは完成形ではなく「バージョン1」だと指摘する。承認後も有効性や安全性を確かめ、対象患者の見極めや細胞の改良、実施体制の整備を続ける必要がある。製造や品質管理、手術、費用といった課題も残る。
iPS細胞20年、研究環境への感謝
iPS細胞誕生から20年について、高橋氏は「20という数字自体に特別な意味はありませんが、振り返れば、研究環境や研究費、人との出会いに恵まれ、やりたい研究を続けられたことに感謝しています」と述べた。その上で「能力があっても研究費に恵まれない人は多く、自分は本当に幸運でした」と振り返る。
「ゴールのない開発」、バージョン2へ
今年の承認については「条件・期限付き承認は、患者さんに早く使えるようにするための制度上の一段階にすぎません」と位置づけ、「これから症例を重ね、安全性と有効性を確かめる必要があります。治療法や製品の開発にゴールはありません」と強調した。スマートフォンが改良され続けるように、細胞治療もようやく「バージョン1」が出た段階であり、「これからバージョン2、3を作り、技術革新を続けなければなりません」と述べている。



