iPS細胞の次の20年「主役は企業に」、山中伸弥教授が書面インタビューで語る
iPS細胞の次の20年「主役は企業に」、山中伸弥教授が語る

山中伸弥・京都大教授(63)は、読売新聞の書面インタビューで、iPS細胞の次の20年について、「主役は企業に移る」とし、「競うべき相手」として研究開発が活発な米国や中国を挙げた。米中との競争を意識するのは、日本の患者に治療用製品をいち早く届けたいという思いがあるからだ。

安全性確認を徹底

山中さんはインタビューで、この20年で最も力を注いだのは、iPS細胞を実際の医療に使える「安全で標準的なインフラ(社会基盤)」へと引き上げることだったとした。

iPS細胞から作った細胞は、患者に移植後、がん化して増殖する恐れがあると懸念されていた。当初、作製に使われていた遺伝子の中に、がん化を引き起こす可能性があるものが含まれていたためだ。様々な臓器や組織の細胞に変化できるiPS細胞は、いわば、毒にも薬にもなると考えられていた。

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安全性が確認されなければ、治療用製品として承認されることはない。山中さんらは、作った細胞について、500個以上のがん関連遺伝子をチェックするなどの作業を徹底。そのため、実用化までには長い歳月を要した。山中さんは「治療を待つ患者さんの時間を思えば、『ようやくここまで来た』という長い道のりでもあった」と振り返る。

備蓄にも注力

安全性の確認とともにこだわったのが、国内で開発を進めることだった。日本で研究を始めたものの、結果的に製品化したのが海外企業ということになれば、日本の患者が治療を受けにくくなる恐れがあるからだ。

そこで、医療用のiPS細胞をあらかじめ作って備蓄し、2015年以降は、備蓄したiPS細胞を研究機関には無償で、企業には安価で提供してきた。国内外で様々な特許を取得し、海外勢の独占を阻止する戦略も取った。今年3月に条件・期限付きで承認されたアムシェプリやリハートは、その成果と言える。

それでも、iPS細胞由来の細胞を使った臨床計画の数は、米国や中国が日本を上回っており、山中さんは危機感を募らせる。

日本は、基礎研究の分野で優れた成果を出しながら、企業の資金不足などで実用化に結びつけられない「死の谷」に陥るケースが多い。山中さんは「『オールジャパン体制』で研究開発を進めていく必要がある」と指摘する。

細胞治療に代表される最先端の医療製品は高額になりがちだ。iPS細胞による治療を広く受けられるようにするには「適正な価格」で提供できるようにする必要がある。一方で、産業として成り立たせるためには、企業側にも利益をもたらさなければいけない。このバランスをどのように取るのか、官民一体となった施策を進めることが重要で、これからが正念場となる。

様々な細胞に変化

iPS細胞は、様々な臓器や組織の細胞に変化し、ほぼ無限に増やせる特徴がある。「人工多能性幹細胞」の英語の頭文字から名付けられた。

皮膚や血液の細胞に複数の遺伝子を組み込んで作製する。最初は4種類の遺伝子を使っていたが、現在は6種類で作られている。アムシェプリとリハートのほか、脊髄損傷や1型糖尿病、網膜色素上皮不全症などで、実用化に向けた研究が進められている。

iPS細胞から立体的な組織を作る研究も実施されているが、臓器を丸ごと作るまでには至っていない。

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