任天堂バーチャルボーイやソニーベータマックス…世界的名企業の“黒歴史”集めた失敗博物館が大盛況
任天堂やソニーの失敗作集めた博物館が大盛況

31年前に発売された「頭が痛くなる」と評判の3Dゲーム機や、規格戦争に敗れた家庭用ビデオ――。世界的な有名企業の「失敗作」だけを集めた博物館が、今、大きな注目を集めている。パリで開催された企画展には、なんと3時間待ちの行列ができたと海外メディアが報じている。なぜ人々は「失敗」にこれほど惹かれるのか。

失敗博物館とは

スウェーデンの臨床心理学者サミュエル・ウェスト氏が創設した「失敗博物館(Museum of Failure)」は、あえて失敗製品やサービスだけを展示するユニークな博物館だ。ニューヨーク、ロサンゼルス、ブダペスト、台北など世界各地で企画展を開催し、大好評を博している。

実はウェスト氏自身も失敗を経験している。博物館のウェブサイト用ドメイン名を取得した際、申請が通った後に「museum」のスペルを間違えていたことに気づいたのだ。開館前から館長自身がうっかりミスをしていたわけである。

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パリでの大盛況

パリのメティエ美術館では2025年10月から2026年5月まで、失敗博物館の協力による企画展「Flops?!(しくじり⁉)」が開催された。旅行情報サイトのトリップアドバイザーには、土曜日に予約して20分前に到着したにもかかわらず、3時間以上並んだという来館者の声が多数寄せられている。

ウェスト氏は2017年6月、ワシントン・ポストのインタビューで「革新を目指すプロジェクトの8割から9割は失敗に終わる」と語っている。しかし、それらの失敗の多くは組織内で隠蔽され、公に語られることはない。失敗博物館は、こうした失敗から学ぶ機会を提供するために創設された。

日本の名だたる企業の“黒歴史”

日本の企業も数々の失敗を歴史に刻んできた。展示品の一つが、ソニーが1975年に発売した家庭用ビデオ規格「ベータマックス」だ。当時としては革新的な製品で、画質も優れていた。

しかし、その1年後に日本ビクター(JVC)が対抗規格のVHSを発売。画質ではベータマックスが勝っていたものの、価格が高く、録画時間が1時間に限られていた。映画を丸ごと録画できるVHSに劣る弱点があった。

さらにソニーは、他社への規格ライセンス供与を頑なに拒否。ポルノ産業の成長も取り込めなかった。失敗博物館は、ソニーの戦略ミスを指摘している。1988年にはベータマックスの世界シェアはわずか12%にまで低下し、ソニーは敗北を認めてVHS規格の製品販売に踏み切った。

任天堂バーチャルボーイの悲劇

もう一つの見どころは、任天堂が1995年に発売した3Dゲーム機「バーチャルボーイ」だ。赤色のLEDを用いた立体視が可能だったが、頭痛や目の疲れを訴えるユーザーが続出。わずか1年で生産終了となり、わずか77万台しか売れなかった。31年後の現在、この「迷ハード」が再評価され、博物館で人気を集めている。

失敗の真の意義

失敗博物館は単なる珍品コレクションではない。ウェスト氏は「失敗から学ぶことがイノベーションの鍵」と強調する。シリコンバレーの「フェイル・ファスト(早く失敗せよ)」という流儀にも疑問を投げかけ、「誇れる失敗作」が私たちに問いかけるものとは何か。失敗を隠すのではなく、共有し、次に活かすことの重要性を訴えている。

展示品には他にも、20分で沈没したスウェーデンの軍艦「ヴァーサ号」や、ヒップホップを生んだと言われるターンテーブルの失敗作など、多種多様な“黒歴史”が並ぶ。技術で勝っても競争に勝てなかった企業の教訓は、現代のビジネスパーソンにとっても示唆に富む。

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