政府は7月14日に閣議決定した「統合イノベーション戦略2026」で、デュアルユース(軍民両用)研究の推進に本腰を入れ始めた。科学ジャーナリストの須田桃子氏は、この戦略が日本の科学にとってプラスにならないと懸念を示している。
オフキャンパス構想の具体的内容
同戦略によれば、2030年度までに国立研究開発法人(国研)や大学に「オフキャンパス」機能のある防衛研究基盤を整備する。また、「防衛省の基礎研究に研究者が躊躇なく参画できるよう」関係省庁が協力して理解増進に取り組むとともに、主に安全保障関連の技術動向調査や人材育成を図る「重要技術戦略研究所(仮称)」を今年度中に設立するという。
「オフキャンパス」とは、施設や情報へのアクセスを徹底管理した区画や環境を意味する。大学や国研は本来オープンな研究環境だが、その環境とは別にセキュリティー対策を徹底した「島」を作るイメージだ。拠点にはアカデミアの研究者も出入りするが、キャンパス本体とは異なるルールに従うことになる。
MITリンカーン研究所の事例
統合イノベーション戦略にあるオフキャンパスに最も近い海外の実例として、アメリカの連邦資金開発研究センター(FFRDC)がある。その代表格がマサチューセッツ工科大学(MIT)が運営する「リンカーン研究所」だ。第2次大戦中のレーダー研究プログラムを引き継ぐ形で、1951年にMITのキャンパス外に設立された。須田氏は、この成り立ちや役割がまさに「オフキャンパス」の起源ともいえる存在だと指摘している。
科学者への影響
須田氏は、アカデミアにこうした場を設けてデュアルユース研究の比重を高めることが、日本の科学にとってプラスになるとは到底思えないと述べている。同戦略は第7期の科学技術・イノベーション基本計画(2030年度まで)に盛り込まれた内容を反映したもので、理化学研究所や物質・材料研究機構などの具体的な研究機関名を挙げて「オフキャンパス機能」や「セキュアな環境」の整備をうたっている点に違和感を覚えるという。



