もし波平とフネに第4子が生まれたら…閉経がもたらした人類進化の謎に迫る
波平とフネに第4子が生まれたら…閉経と人類進化

もし『サザエさん』の波平とフネに第4子が生まれたら、何が起きるのか。母と娘が同時に子育てをするという、極めてまれな状況が生じるかもしれない。しかし、人類は閉経という進化的な獲得によって、このような危機を回避してきた。総合研究大学院大学統合進化科学研究センター教授の渡辺佑基氏が、その謎に迫る。

閉経する生物は極めてまれ

魚、鳥、爬虫類、両生類では、生涯の途中で産卵や出産をやめるメスはほとんどいない。哺乳類では、世界に6000種以上いる中で、メスが閉経するのはヒトを除けばシャチなどの数種のハクジラ類に限られる。さらに、ヒトに近縁なチンパンジー、ゴリラ、オランウータンなどの霊長類にも閉経は見られない。最近、チンパンジーの一部の集団で閉経が確認されたが、種全体の特徴とは言えない。

閉経は文明以前から存在した

「日本人女性の平均寿命が90歳近いのは医療が発達した現代だからで、本来のヒトの寿命は短く、閉経前に大半の女性が亡くなるのでは」という疑問がある。しかし、アフリカの砂漠地帯で伝統的な狩猟採集生活を営む女性も、人生の後半で閉経を経験する。古代社会でも閉経年齢(約50歳)を超えて長生きする女性は珍しくなかった。つまり閉経は文明の産物ではなく、ヒトという種が本来持つ自然な生態である。

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「祖母仮説」の不完全さ

閉経の説明として「祖母仮説」が提唱された。これは、孫の世話に集中するために繁殖能力を捨てるという説で、ヒトやシャチの研究から支持された。しかし、閉経しないゾウでも祖母が孫の生育を助けることが判明し、この仮説の不完全さが露呈した。

閉経しなかった場合の不都合

もし閉経がなければ、高齢での出産リスクや、母娘の同時育児による資源競争が生じる。渡辺氏は「閉経は、子育てを終えた女性が孫の育児を助けることで、種全体の生存率を高める進化の産物だ」と指摘する。人類はこの珍しい戦略を獲得し、長寿と繁栄を実現してきた。

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