サザエさん一家で考える閉経の進化:母娘同時育児の対立回避が鍵
閉経の進化、母娘同時育児の対立回避が鍵

もし、あのサザエさん一家で波平とフネに第4子が生まれたら、何が起こるだろうか。総合研究大学院大学統合進化科学研究センターの渡辺佑基教授は、この仮想的なシナリオを用いて、ヒトの閉経の進化的意義を鮮やかに描き出す。

仮想の第4子が引き起こす「骨肉相食む」争い

サザエ、カツオ、ワカメの3きょうだいに、さらに下のきょうだい、すなわちフネと波平の最後の子が生まれたとする。その子はタラオ(サザエとマスオの子)に年が近く、双方とも手がかかる。フネにとってもサザエにとっても、幼い我が子が一番かわいい。そのため、食料、医薬品、居住空間などの限られた資源をめぐって、母と娘が激しく対立することになる。結果として、フネの最後の子とタラオが健全に育ち、成人できる確率は悲しいほど低くなってしまう。

フネは孫の世話に専念すべき

フネの立場からすれば、最後の子を作って「骨肉相食む」環境を作り出すのは賢明ではない。第1子のサザエが成人したら、それを機に自分の子作りをやめ、孫であるタラオの世話、すなわちサザエの子育て援助に注力した方が、自分の遺伝子をより多く将来に残す上で有利になる。

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渡辺教授は、この母子の同時繁殖が招く世代間の対立こそが、女性が閉経しなかった場合に噴出する深刻な不都合だと指摘する。「世代間の対立を是が非でも回避したい切迫した事情が、ヒトをして閉経を進化せしめる原動力となった可能性が高い」と述べている。

ゾウの事例も説明可能

なお、ゾウは閉経しないが、第1子を産んだ後の余命がヒトほど長くないため、母子の同時繁殖は起こらない。従来の「祖母仮説」では説明できなかったゾウの事例が、この「世代間の対立」仮説によって首尾よく説明できると、渡辺教授は主張する。

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