『左ききのエレン』アニメ化 原作者と声優が語る「天才と凡人」の苦く痛い物語
才能の限界に苦しみながら「何者か」になろうともがく凡人と、圧倒的な才能を持った天才。二人の姿を描く漫画『左ききのエレン』が、4月7日からテレビ東京系でアニメ放送を開始した。これを機に、原作者のかっぴーと、山岸エレン役を演じる声優・内山夕実に独占インタビューを行い、作品の核心と制作背景に迫った。
アニメ化の驚きと熱意
かっぴーはアニメ化の話が来た時、「本当か?」と疑ったという。「こういう企画がなくなることは山ほどあるので、最初は『いいところまでは来ているんだろうな』という程度の受け止めでした」と振り返る。作品は「少年ジャンプ+」での連載が2022年に一度完結した直後にアニメ化が決定。前例がないほど早いタイミングでの発表だったが、「発表したらこっちのもんだ、確定だと思ってうれしかった」と語った。
内山夕実は「この作品は衝撃的な内容で、漫画というよりドラマを見ているような生々しさを感じました」と作品の印象を語る。「アニメ化を熱望していたファンが多いと感じていたので、携われるとしたら、私も同じぐらいの気迫で臨まないと、と思っていました」と役への覚悟を明かした。
広告業界からの転身と独立
かっぴーはもともと子どもの頃から漫画が好きだったが、絵がうまくないと諦めていた。高校生の時に広告代理店を目指し、美大に入るという逆算計画を立てたが、社会人になって数年目に破綻。「このままだと、本当にパッとしない中堅のクリエーターとして終わるなと思いました」と当時を振り返る。
広告代理店からウェブ制作会社のプランナーに転職後、同僚が辞めるのを見て自身を重ね、「自分も同僚も天才になれなかったな」と思った時に『左ききのエレン』のストーリーを思いついた。独立して漫画家になった最初の月の収入は5万円だったが、「それぐらいやらないと説得力がない。悲壮感も全然なくて、5万円、うれしかったです」と語る。
天才を演じる難しさと適材適所
内山はエレンを演じる難しさについて「そもそも天才がどんなことを普段考えているかって、全く想像できませんでした」と打ち明ける。エレンの孤独や人間らしさを表現するのに苦労したが、「人のことを突っぱねているようで、実は誰よりも人を求めているような、そこがすごく人間らしくて、お芝居の中で出せていけたらいいな」と役への思いを語った。
声優業界の競争については「若手の頃は誰かと自分を比べていましたが、今は適材適所、私にはこういう役が合っていて、たまたまご縁がなかったんだなと考えられるようになりました」と心境の変化を明かす。
10年後に苦みがよみがえる作品へ
かっぴーは最近の作品傾向について「あまり気持ちを揺さぶらない作品がいいとされている気がして、痛みを伴わないコンテンツが受けているなという印象があります」と指摘。「僕が若い頃は、いろんな作品があって、苦い作品もあったし、いろんな味があったと思うんですよね」と続ける。
そして「痛いものとか苦いものが少ない中で、久々にこういう作品を見て、忘れられない作品になってほしい」と願いを込める。「1週間で忘れるものではなく、10年後も思い出す時に苦みが口の中に広がるような作品になればいいなと」と語り、作品への深い思いを明かした。
二人の互いへの思い
かっぴーは内山について「内山さんがエレンで良かったです。僕の中にも明確にこういう声、というのがあまりないキャラクターだったので。エレンはすごくクールで冷たい側面もあれば、子どものような側面もあるし、誰にするか悩むだろうなと思っていました」と評価。「後で通して見たら、『これしかない』と思うでしょう」と信頼を寄せる。
内山は「アニメを見てくださる方にどう受け止めていただけるのか、ドキドキしますが、自分なりに全うしたつもりなので、安心して見ていただけたらと思います」と視聴者へのメッセージを送った。
【かっぴー】1985年神奈川県生まれ。株式会社なつやすみ代表。武蔵野美術大卒業後、広告会社のアートディレクターとして働くが挫折。ウェブ制作会社のプランナーに転職後、趣味で描いた漫画をインターネットで公開し、大きな話題となる。2016年に漫画家として独立。
【内山夕実】10月30日生まれ、東京都出身。出演作に『無職転生』のルーデウス、『結城友奈は勇者である』の犬吠埼風など。



