大量生産されたハワイアン柄のバッグが2000円から3000円ほどで売られる会場で、ある女性作家は自らの作品を9800円で販売していた。材料費と手間賃を考えるとこれが限界だったが、客からは「高い」と言われることも多く、売り上げは伸び悩んでいた。
藍染工房との出会い
そんな中、イベントで知り合った作家に誘われ、埼玉県羽生市にある藍染の工房を訪れる機会があった。染めるものを持参するよう指示され、天然素材なら何でも良いと言われた。何を持ち込もうか考えた末、目についたのはハワイアン友禅を施すために注文していた日傘キットだった。生地は綿で天然素材。藍染は絞りが主流で手描きで模様を入れる人はほとんどいないが、自分で柄をあしらって染めてみようと思い立った。
彼女はハワイの花の絵を描き、藍染工房に持ち込んだ。藍染の染液に布を浸して引き上げると、友禅同様に見事に柄が現れた。その出来栄えを見た藍染の伝統工芸士からは「この技法はすごいねえ」と褒められた。
コロナ禍で突然失業
順調に見えた活動だったが、コロナ禍で突然職を失う。収入源を断たれた彼女は、この藍染とハワイアン友禅を組み合わせた技法に本格的に取り組む決意をした。その後、試行錯誤を重ね、独自の「藍染×友禅」技法を確立。作品はSNSで話題となり、現在では3万円を超える日傘が発売と同時に完売する人気ぶりだ。
伝統工芸の枠を超えたこの試みは、新たな顧客層を開拓し、藍染業界にも刺激を与えている。



