尾上右近「研の會」ファイナル千秋楽、11年間の挑戦に幕「好きにやらせていただきました」
尾上右近「研の會」ファイナル千秋楽、11年間の挑戦に幕

歌舞伎俳優の尾上右近(34)による自主公演「研の會(かい)」のファイナル(第10回)が3日、東京・浜町の明治座で大千秋楽を迎えた。2015年に始まった自主公演は今回で区切りとなり、客席をぎっしり埋めた観客が右近の挑戦を見届けた。

東西2都市で舞踊3本を披露

ファイナル公演は9月5、6日に大阪・国立文楽劇場、10月2、3日に東京・明治座と東西2都市で行われ、プログラムは舞踊3本だった。幕開きの「藝阿呆(げいあほう)」は、明治期の義太夫を代表する名人、三代目竹本大隅太夫(太夫)と二代目豊沢団平(三味線)が義太夫に全身全霊をかけた物語を、1960年に八代目竹本綱太夫・十代目竹沢弥七という名コンビがラジオ番組の中で初演した異色の作品。今回、右近は文楽界からゲスト出演した竹本織太夫・竹沢団七の生演奏に合わせ、舞踊家・尾上菊之丞による新たな振り付けのもと、伝説の名人のエピソードを全身で表現した。

「鷺娘」の宙乗りと「春興鏡獅子」

続く「鷺娘(さぎむすめ)」は、恋に苦しむ娘を白鷺の寂しげな姿に重ね合わせた女形舞踊の大曲。幕切れは、ファッションデザイナーの丸山敬太が手掛けた巨大な衣装をまとって空へと舞い上がる「宙乗り」も披露。そのゴージャスなラストが観客を驚かせた。

公演を締めくくったのは、研の會第1回で初演した「春興鏡獅子(しゅんきょうかがみじし)」。右近が3歳の頃、映画監督の小津安二郎が撮影した六代目菊五郎の「鏡獅子」の映像を見てから、ずっと目標にしてきた演目だった。踊りを披露していた小姓の弥生が獅子頭を手に取ると、その魂が乗り移り、獅子の精となる。勇猛果敢な姿で真っ白な毛を振る右近の奮闘に、ひときわ大きな拍手が贈られた。

「これからも前だけを見て励んでいきます」

公演を終えた尾上右近のコメントは以下の通り。

「国立劇場小劇場から始まった『研の會』は、皆様のお力添えを賜(たまわ)り、大入りの明治座にて賑々(にぎにぎ)しくファイナルを迎えることとなりました。数え切れないほど大勢の方々のお陰様(かげさま)でございます。沢山の『あなた』に感謝を申し上げたいと思います。

11年間、好きにやらせていただきました。これからも『歌舞伎が好き』という気持ちを一番の武器に、前だけを見て励んでいきます。目標は、新歌舞伎十八番であるこの『春興鏡獅子』を80歳で踊らせていただき、80回毛を振ること! 引き続き、尾上右近はもちろんのこと、歌舞伎を末永くご愛顧くださいますよう、よろしくお願い申し上げます。次の舞台でお会いいたしましょう。」