フランス郷土料理トリュファード、カンタルチーズとジャガイモで作る「祖母の味」
フランス郷土料理トリュファード カンタルチーズとジャガイモの「祖母の味」

フランス中部オーベルニュ地方のカンタル県は、カンタルチーズの産地として知られる。そのチーズを使った郷土料理が「トリュファード」だ。トリュファは現地の方言でジャガイモ。家畜を放牧するために山小屋生活を送る牧人が作ったことが発祥とされる。

カンタルチーズとジャガイモのシンプルな一皿

主食の付け合わせとして提供されるトリュファード。県都オーリヤックにあるレストラン「ラ・バッシュリ」では、看板メニューに据える。店主のフレデリック・ビジエさん(52)は、「代表的家庭料理で、食べる度に幼少時代の記憶や家族との思い出がよみがえってくる」と語る。

食材は、カンタルチーズとジャガイモ、塩、コショウ、パセリだけ。チーズは、凝固した乳を熟成させる前の「トム・フレッシュ」と呼ばれるものを使う。作り方は、薄切りにしたジャガイモを炒め、その上にトム・フレッシュをのせ、溶け出したら一気に混ぜ合わせる。数分で素早く料理するのがコツだ。

「祖母の味」再現への試行錯誤

ビジエさんは納得できる味になるまで半年間の試行錯誤を繰り返した。こだわったのは「祖母の味」の再現だ。グラタンを連想させる見た目で、一口食べるとジャガイモの甘みが広がる。滑らかに溶けたチーズが絡み、絶妙なハーモニーを奏でる。トム・フレッシュを使うため、チーズ特有のクセはなく、口当たりは軽い。パセリが味を引き締めるアクセントになっている。

トリュファードには、ベーコンを加えるなど家庭ごとにアレンジが存在する。ビジエさんは「良い食材を使い、シンプルであることが基本」と考える。余計なものは一切加えず、普遍的な味を追求している。家庭の味に慣れた地元客も「ここが一番だ」と最高の賛辞を贈ってくれるという。

アリゴと伝統のチーズ市場

カンタルチーズとジャガイモを使った郷土料理としては「アリゴ」も有名だ。マッシュポテトにトム・フレッシュや生クリーム、ニンニクなどを加えて作る。弾力性があり、おもちのように伸びる。付け合わせはソーセージがおすすめだ。

カンタルチーズはフランスで最古のチーズとされる。高原に位置するカンタル県では冬場の保存食としてチーズが製造されるようになったといい、その歴史は古代ローマ時代まで遡る。カンタル県は、サレールやサン・ネクテールなど計5種類のチーズの産地として有名だ。

オーリヤック中心部には1890年から続く伝統のチーズ市場があり、観光名所にもなっている。市が食肉処理場だった建物にチーズの保管設備を設けたことが起源となり、生産農家が集ってチーズの量り売りをするようになった。

チーズ専門店の取り組み

市場に軒を構えるチーズ専門店「モラン・フロマジェ」では、300種のチーズを取り扱う。真空密閉したトリュファードやアリゴの製造販売も手掛けており、お土産に最適だ。店主のマリクリスティーヌ・モランさん(53)は「地元産チーズを普及させて守っていくことが自分の使命と感じている」と力を込める。市場内には、チーズ製造に使われていた木製の圧縮機なども展示されており、チーズ製造の歴史を知ることができる。