将棋棋士・糸谷哲郎九段が紹介『台湾漫遊鉄道のふたり』の食と関係性
将棋棋士・糸谷九段が紹介『台湾漫遊鉄道のふたり』

食事は大抵の場合、一人より二人、もしくは複数人で楽しむ方が美味しさを増して感じられるものだ。特に、その相手が気心の知れた相手であったなら。将棋棋士・糸谷哲郎九段が、戦前の台湾を舞台にした小説『台湾漫遊鉄道のふたり』を紹介する。自作小説の映画化により日本統治下の台湾へ講演旅行に招待された女性作家・青山千鶴子と、その通訳として立候補した台湾人女性・王千鶴の二人の関係を、台湾の各地、そして食事を絡めながら描いた物語だ。

日本と台湾の食事の違いが関係性を映す

名前を付けがたい二人の関係の推移もさることながら、さまざまな料理の描写が食欲をそそる。日本と台湾での食事の違いも、二人の分かり合えるようで分かり合えないところがある描写と重ね合わされており、例えば日本人が経営する旅館において供される食事も形式は日本式ではあるが、刺身などは午魚(ミナミコノシロ)や白鯧(マンジュウダイ)のような台湾で好まれる魚になっている。

また、香の物も膎(ゲーイ)といわれる牡蠣や蛤、小えび、蟹、小魚などを塩漬けにしたものに変わっており、親しみがあるようで新しい食事になっているともいえる。もちろん台湾独自の食事、例えば麻薏湯(モァーイートゥン)といわれる黄麻(こうま)の若葉を煮たスープなど、日本ではなかなか味わえない食事の名も挙がる。

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作中の食べ物は現代の台湾でも味わえる

著者のあとがきによれば、作中の食べ物は現代の台湾においても味わえるが、季節や地域が限定されるものもあり、手間暇がかかる食べ物はなかなか出会うことができなくなっているとのことである。小説に思いを馳せながら、あるいは現地で、今はまだ味わえる食事を楽しむのも、今しか味わえない贅沢なのかもしれない。

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