ファティ・アキン監督作『白パンと独裁者』(2026年8月7日公開、配給:ビターズ・エンド)で撮影監督を務めるカール・ウォルター・リンデンローブによる圧巻の映像美が光る本編映像が公開された。
12歳の少年の視点で描く戦争末期の物語
本作は、アキン監督の恩師でドイツ映画界の重鎮ハーク・ボームが自らの幼少期の記憶を綴った脚本を映画化。12歳の少年ナニング(ジャスパー・ビラーベック)の目線で、ドイツ北部・アムルム島を舞台に、第二次世界大戦終戦間近の揺れ動く時代が映し出される。
公開された映像では、ヒトラーの死をきっかけに心身を病み、一切の食事を受け付けなくなった母ヒレ(ローラ・トンケ)を元気づけるため、ナニングが生まれて初めて自らの手でウサギを狩り、家族に戦時下で貴重な肉料理を振る舞う姿が描かれる。しかし、母は相変わらず手に取ろうとせず、叔母エナ(リーザ・ハークマイスター)との口論に発展するなど、家族の空気は悪化の一途を辿っていた。
干潟を渡るナニングの姿が圧巻
映像は、最悪の夜が明け、「バターとはちみつをたっぷり塗った白パンが食べたい」という母の唯一の願いを叶えるため、ナニングが立ち上がる場面から始まる。まだ薄暗い早朝、ぐっすりと眠る弟妹たちを横目に、ヒトラー青年団の制服に身を包んだナニングは決意を秘めた表情で家を後にする。
自転車を押し向かうのは、アムルム島の隣に位置するフェール島。干潮のわずかな時間だけ陸続きとなるその島を目指し、潮が引いたばかりのぬかるむ干潟を渡っていく。アムルム島に多く生息するミヤコドリの姿が瑞々しく描かれる中、広大な海岸線とどこまでも広がる空。その壮観な自然のただ中にぽつりと佇むナニングの姿は力強く、観る者の胸に深く迫る映像となっている。
アキン監督が明かした撮影秘話
撮影監督カール・ウォルター・リンデンローブは、『インデペンデンス・デイ』をはじめとするローランド・エメリッヒ監督作品を数多く手掛けてきたことで知られる。今回が初タッグとなったファティ・アキン監督は、「カールは素晴らしい撮影監督であり、彼の卓越した技術的知識がなければ実現できなかったシーンがたくさんあります」と語り、初めてとは思えないほどの絶大な信頼を明かした。
さらにアキン監督は、「忘れてはならないのは、彼が普段慣れているハリウッド映画のような莫大な予算はなかったということ。そしてロケ地が自然保護区であったため、数多くの制約が存在したことです。クレーンも使えなければ、撮影用のレールを敷くことすらできない。私たちはまるで野生動物の撮影クルーのように少人数で、きわめてクラシカルな手法を用いて撮影を行いました」と続け、厳しい制限の中で撮影を成し遂げた現場を振り返った。
本作は、8月7日よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次公開。アムルム島の雄大なロケーションとリンデンローブの手腕が際立つ映像美をぜひ劇場で体感していただきたい。



