ハラスメントを巡る裁判をテーマにした映画「ファーストボイス」の前田哲監督が兵庫県宝塚市のミニシアター「シネ・ピピア」を訪れ、トークイベントを開いた。約30人のファンに対し、「俳優陣が、すごく熱意を持って演じている。映画を見た後にスカッとし、『明日もがんばろう』という前向きな気持ちになってもらえると思う」と映画館での鑑賞を呼びかけた。
監督とシネ・ピピアの縁
前田監督は大阪府出身。小学生の頃、宝塚市内の遊園地「宝塚ファミリーランド」で遊び、両親と歌劇を楽しみ、鳳蘭(おおとりらん)さんのファンだったという。1998年に映画監督デビュー。当時からシネ・ピピアの景山理支配人と親交があり、姉妹館「シネ・ヌーヴォ」(大阪市西区)を含めてPRで登壇することが多く、「両映画館はホームグラウンドのように感じる」とする。
これまでに筋ジストロフィーの重度障害者と介助者の関わりを描いた「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」(2018年)や、作家・佐藤愛子さんのエッセー集を原作とする「九十歳。何がめでたい」(24年)などを手がけた。作品を通じて「障害者だから」「老人だから」という思い込みの打破を目指しており、「映画で差別と偏見がなくなることにつながれば」との思いがあるとした。
「ファーストボイス」の内容
「女性だから」の打破という最新作「ファーストボイス」は、89年に日本で初めて提訴された「福岡セクシュアル・ハラスメント裁判」に着想を得たフィクション。お人好しの弁護士(綾瀬はるかさん)のもとに、職場で理不尽な嫌がらせを受け、仕事を奪われたという女性(ファーストサマーウイカさん)が訪れたことから展開。会社と上司を相手取った前例のない裁判を通じて、「最初の声」が社会を動かすストーリーになっている。イベントでは綾瀬さんが描いた前田監督の似顔絵も披露された。監督は綾瀬さんを「すごくピュアで、周りを幸せにする」と評した。
前田監督は、綾瀬さんのセリフに70年代のテレビドラマの合言葉「レッツ・ビギン」を採り入れたほか、転職を意味する流行語「とらばーゆする」、歌手のアグネス・チャンさんが子連れでテレビ局に出勤したことを巡る「アグネス論争」などを作中に盛り込み、時代背景を若い世代に伝える工夫をしたと振り返った。
撮影ではエキストラ約300人を使い、当時のソバージュの髪形を再現し、肩パッドの入った衣装を準備するのが大変だったというエピソードも披露した。
社会性をポップに
「社会性のあるものを明るくポップに見せることで、関心を持ってもらいたい」と言い、「今までその問題の新聞記事に目を通さずにいた人が、記事をじっくり読むきっかけになれば。一人ひとりが普段の生活を送りながら問題意識を持つことが、社会を変えると信じている」と結んだ。