芥川賞作家・鈴木結生さん、短編小説を相次ぎ発表「猛烈な勢いで書き続ける」
芥川賞作家・鈴木結生さん、短編小説を相次ぎ発表

福岡市在住の芥川賞作家、鈴木結生さん(25)が短編小説を相次いで発表している。今春、西南学院大大学院を卒業し、専業の作家として歩み始めた。「長編小説に詰め込みがちだったものを、部分的に短編にすることで猛烈な勢いで書き続ける日々。小説家としての自信につながっている」と語る。

「猫にバイブル」―創作の本質を問う

「猫にバイブル」(小説トリッパー春季号)は、創作とは何かをテーマにしており、昨年刊行した長編『携帯遺産』に連なる作品だ。夏目漱石の弟子だという架空の小説家、枢蓼虫(くるりりくちゅう)の幻の草稿「猫のためのバイブル」を軸にした物語で、幻の草稿は聖書の中に書き込まれていたという設定。鈴木さんが幼い頃から親しんできた聖書は「あらゆる本の原型とも言えるもの。そこにさらに書き込んで、自分のための書物を作るという行為は理想であり幻想でもある」という。

今年は日本文学をテーマに創作しており、今作は明治から昭和にかけての文壇を描いたが、現在の排他的な空気感にも影響を受けたとする。デビュー作「人にはどれほどの本がいるか」を表題作とした作品集に収録され、8月に朝日新聞出版から刊行される。

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「Hōjōisme」―AIと創作の葛藤

「Hōjōisme」(文学界5月号)も、AI(人工知能)という別のアプローチから創作を問う。近未来を思わせる世界で暮らす「僕」は作家で、〈現代作家の仕事は専ら、過去の偉大な文人たちのAIをカスタマイズし、それらが出力したテクストをいかに編集するか、ということにかかって〉いるという創作の苦悩が描かれる。

鈴木さんは2023年に芥川賞を受賞し、注目を集めた。今回の短編2作は、それぞれ異なる角度から創作の本質に迫る意欲作となっている。今後の長編執筆にも期待がかかる。(後田ひろえ)

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