芥川賞の鳥山まことさん、故郷・宝塚を題材に小説執筆を示唆 講演会で約200人聞き入る
芥川賞の鳥山まことさん、宝塚題材の小説執筆を示唆 講演会

兵庫県宝塚市出身で、小説「時の家」で第174回芥川賞を受賞した作家、鳥山まことさんの講演会が、同市東洋町の宝塚市役所市民ホールで開かれた。「小説を通じて、建築の現場で職人さんが苦労した風景や、見落としている街の大切さを残していきたい」としたうえで、宝塚をテーマにした小説執筆を示唆し、市民ら約200人が聞き入った。

生まれ育った街への思い

鳥山さんは1992年に宝塚市で生まれ、18歳まで市内で過ごした。現在は明石市在住。1級建築士で、受賞作は、解体が迫った築40年の一軒家を舞台に、そこに住んだ3世代の人々の思いを表現した。

「芥川賞への道のり」と題した10日の講演で、鳥山さんは小中学校時代は野球に熱中したと話し、市役所の向かいにある市立スポーツセンターの球場で「初めてホームランを打ったことを鮮明に覚えている」と懐かしんだ。

執筆の原点と震災の記憶

高校時代は数学や物理が好きで、国語は得意ではなかったとした。就職してから多忙の中で、「自分の軸になるもの」を探していて「歴代の芥川賞受賞作などの小説を読み返しているうちに『このジャンルに向いている』と直感的に思った。自身も書き出したところ、面白くなっていった」と、読書と執筆の相乗効果があったことを明かした。

最後に「一番長く暮らした宝塚の街を振り返り、街の物語を自分の中で構築するのは大事なこと」と、宝塚を題材にした創作について言及し、会場を沸かせた。

講演後の取材で、阪神大震災について「当時、2歳だったので記憶はないが、後になって、(体験した人の)話や言葉によって、体感を埋め戻し、作り起こしている感覚がある。『時の家』の中にも、震災がおのずと出てきた」と語った。

講演に先立ち、市特別賞の贈呈式があり、森臨太郎市長が賞状を手渡した。