2026年5月31日、東京・墨田区役所の会議室で、タクティカルFPSゲーム『VALORANT』の国内大会「VALORANT Challengers Japan 2026」のパブリックビューイングが行われた。プロeスポーツチーム「INSOMNIA(インソムニア)」が墨田区と共催し、ファン約数十人が集まり、声援を送りながら観戦を楽しんだ。
区役所ならではの光景、88歳の男性が来場
会場は墨田区役所13階の大会議室。日曜日で閉庁中のため、夜間休日入口から入場した。室内には観戦用スクリーンや応援グッズが用意され、参加者は応援ボードやフラッグにメッセージを書き込んだ。試合は「Challengers Japan Split 2」Main Stageでの「IGZIST」との対戦で、スティックバルーンや声援で大きな盛り上がりを見せた。
特筆すべきは、88歳の男性が来場したことだ。墨田区の公式LINEで開催を知り、孫との共通の話題にしたいと参加。スタッフにルールや画面の見方を教わりながら観戦を楽しんだ。eスポーツは通常10~20代が中心だが、区役所開催により幅広い年齢層が集まった。男性は60歳以上のシニアチーム「MATAGI SNIPERS」の存在も知っており、シニアeスポーツの知名度向上を実感させる一幕となった。
開催の背景:公民学連携のモデルケース
本イベントは、墨田区企画経営室の飯田晃英さん(公民学連携担当課長)と「INSOMNIA」代表の本橋壮太さんが推進してきた。本橋さんは「創業当初から、オンラインの数字だけでなく、実際に人が動くeスポーツチームをつくりたいと考え、ホームタウンを持ってオフライン集客にこだわってきた」と語る。チームは東京大学や慶應義塾大学など7大学とスポーツ科学の研究連携も行っている。
飯田さんは「区役所は土日に閉庁しており、意外と使いやすい。庁舎リニューアルで会議室もきれいになった。区が主催する形で、地元チームを応援する機会をつくった」と説明。区役所でのパブリックビューイングは珍しく、SNSや来場者から「おもしろい」と好評だった。eスポーツ業界からは「サッカーや野球に近づくモデルケース」と評価されたという。
FPSゲームへの懸念は? 職員の反応はポジティブ
『VALORANT』は銃を撃つFPSゲームだが、飯田さんは「暴力的な演出はなく、行政が関わるハードルは低い」と語る。本橋さんは「墨田区は先入観で判断せず、実際にゲームを見て判断してくれた」と感謝した。区内への告知では、隠れeスポーツ好きの職員が発覚し、区役所内のeスポーツ部の部員が10名を超えた。
墨田区をeスポーツの聖地に:国技館も味方に
飯田さんは過去にフットサルクラブ「フウガドールすみだ」の誘致経験があり、ホームタウンスポーツが地域活力やシビックプライドの醸成につながると実感している。墨田区には両国国技館があり、同館のウェブサイトには「国技館をeスポーツの聖地に」と明記。本橋さんは「国技館のeスポーツ理解は早く、さまざまな大会が開催されている。区や大学との連携も含め、恵まれた環境」と話す。
2025年5月には、『ポケモンユナイト』のアジア大会優勝を機に、選手が山本亨区長を表敬訪問。スポーツ紙にも掲載され、本橋さんは「スポーツとして認識された」と喜んだ。今後は「墨田区をeスポーツの聖地に」を掲げ、カルチャーとして根付かせたい考え。2026年7月中には、墨田区、INSOMNIA、情報経営イノベーション専門職大学(iU)の三者でホームタウンeスポーツチーム連携協定を締結予定で、両国国技館で締結式を行う。飯田さんは「eスポーツが企業スポーツではなく、地域スポーツとして根差し、区民に親しまれる存在になってほしい。国技館の客席がチームカラーの紫に染まる日が来たら嬉しい」と期待を込めた。



