成瀬巳喜男監督の映画『女が階段を上る時』(1960年)と『乱れ雲』(1967年)の4Kデジタルリマスター版が、「第39回東京国際映画祭」日本映画クラシックス部門で世界初上映されることが決まった。東宝グループのTOHOアーカイブが映像と音声を修復し、成瀬監督後期の2作品がスクリーンによみがえる。
『女が階段を上る時』:銀座の雇われマダムを描く
『女が階段を上る時』は、菊島隆三のオリジナル脚本を映画化。銀座の高級バーで雇われマダムとして働く女性の姿を、白黒のシネマスコープで描く。象徴的な空間として登場する「階段」や画面の構図を通じ、主人公の心理を繊細に映し出した。主演の高峰秀子は衣装も担当。仲代達矢、森雅之、加東大介らが出演し、音楽は黛敏郎が手がけた。
『乱れ雲』:成瀬監督の遺作
成瀬監督の遺作となった『乱れ雲』は、交通事故で夫を失った女性と、事故の加害者である男性の許されぬ愛を描いたメロドラマ。司葉子と加山雄三が出演し、加害者に次第に引かれていくヒロインの心の動きと、2人の別れを描いた。十和田湖畔の情景と武満徹による音楽も作品を彩る。脚本は山田信夫。草笛光子、土屋嘉男らが共演している。
修復で浮き彫りになる「音」の設計
今回のリマスターでは、映像(撮影、照明、編集、美術)の完成度だけでなく、音声の緻密な修復により、成瀬監督による細やかな演出が「音」の設計にまで及んでいたことが浮き彫りになり、修復によって作品の魅力を改めて伝えるとしている。
成瀬監督は昨年、生誕120年を迎え、カンヌ国際映画祭では『浮雲』の4Kデジタルリマスター版が上映され、フランスでもリバイバル公開された。東京国際映画祭でも『浮雲』『めし』『銀座化粧』の4Kデジタルリマスター版が上映されるなど、国内外で作品を見直す機会が続いている。