磯村勇斗&末澤誠也W主演『mentor』ワルシャワ国際映画祭で反響、吉田恵輔監督がQ&Aで語る
磯村勇斗&末澤誠也W主演『mentor』ワルシャワで反響

俳優の磯村勇斗とAぇ! groupの末澤誠也がW主演を務める映画『mentor』(10月16日公開)が、ポーランドの「第42回ワルシャワ国際映画祭」メインコンペティション部門でワールドプレミアを迎え、現地の観客の前で初めて上映された。

不穏さとおかしさが混在する“感情カオス”の物語

本作は『ミッシング』『空白』などで知られる吉田恵輔監督(※吉=つちよしが正式表記)が手がけた。15年前の花火遊びがきっかけでアパートの火事を起こしてしまった幼なじみの龍之介(磯村)と拓海(末澤)。その火事で妻子を失い、自身もけがの後遺症を抱える埜本(綾野剛)と偶然再会した拓海は、何度も詫びるが、埜本は恨み言を言わずに優しく包み込み、拓海は埜本を“メンター”として慕っていく。

ワルシャワの観客から笑いと拍手、感想が続々

10月10日にワルシャワの文化科学宮殿で行われたワールドプレミアでは、満員の会場で幾度も大きな笑いが起き、エンドロール後には温かく大きな拍手が送られた。翌11日の上映後には「多面性のある映画で、喜劇から悲劇を体験できるのは面白かった」「笑いがたくさん起きた上映で面白かった!」といった声が寄せられた。

両上映後のQ&Aに登壇した吉田監督は「今まで10本以上の映画を手がけてきたが、この作品の脚本づくりが最も時間がかかった。キャリアの中でもひときわ思い入れが強い作品だ」と語り、2日目には「ポーランドの皆さんはリアクションがとても良いのでうれしかったです」と充実の表情を見せた。

吉田恵輔監督が語る着想とテーマ

Q&Aで監督は、本作の着想について「数十年前、近所の子どもたちと花火遊びをしていた時に、たまたま近所で火事が起こったことがありました。距離が離れていたから、この花火が原因ではなかったのですが、もしその子どもたちの花火が原因だったらどうなっていたのか、というエピソードから着想を得ました。その当時よりもCGの技術が進み、火事のシーンがリアルに再現できるようになったいま、脚本を書き始めました」と説明。

被害者が赦す姿勢を見せる理由については「何をしたら加害者は“反省した”ことになるのかということがこの作品のテーマです。反省の形は人それぞれ違うはずなので、まずはその違いを描こうとしました。逆に自分が被害者側だとしても、相手を赦しているのか、まだ恨んでいるのかという状態は、分からないとも思います。なので本作では、埜本は自分を勘違いしている男として描きました」と語った。

アーチェリーを題材にした理由については「2人は同じ罪を犯し、各々の手段で反省しているわけですが、反省したかどうかを決めるのは自分自身で良いはずなのに、今の世の中は他者が決めていると思います。アーチェリーに頑張りつつも心の中では反省している人と、何も努力しないけど家に引きこもって反省している人とで、どちらが反省しているのだろうという差を作りたいと思ったのです」と述べた。

コメディの要素については「私の映画は重いテーマが多いのですが、本当に好きなのはブラックコメディです。内容に応じてどこまでコメディを入れていいのかを毎回悩んでいます。悲劇と喜劇が共存している映画を今までも作ってきました。悲しんでいる人と笑っている人が映画館で横並びに見ているような作品を作りたいと思っています。観客に感情をおまかせして作っています」と話した。

日本と欧州の文化差については「日本映画は、冒頭に罪があり、中盤に怒りや恨みがあり、最後に赦される映画が多いです。ラストシーンに来るはずの“赦し”のシーンを冒頭にもってきたらどうなるだろう?という発想から『mentor』は生まれました。2つの軸を用意してあり、1つは、自分と反省の仕方が違う人間に対して嫌悪感を抱くということ。もう1つは、“mentor”のように正しいことを言う人は、本当は怪しいのではないか?という視点です」と明かした。

喪失感の描き方については「“喪失”をテーマにした映画をこの数年で数本作ってきました。悲劇から登場人物がどうやって乗り越えていくかという物語を作ってきている中で、悲劇を“見ない”ものにしようとする人物をサブキャラクターに据えることが多くありました。今回はその悲しみに向き合わない人をメインキャラクターに持ってこようと思い、“悲しいけど全然平気”という人物で物語を作ったらどうなるかというのが出発点でした」と語った。