映画『急に具合が悪くなる』の公開記念Q&Aトークイベントが27日に都内で開催され、濱口竜介監督が登壇。制作の経緯を問われ、原作である哲学者・宮野真生子氏と文化人類学者・磯野真穂氏の往復書簡を読んだ時の感動を「本当に体が震えるような感動を覚えました」と振り返った。
原作の魅力と映画化の壁
濱口監督は、原作について「根本的にはとても知的で抽象的なやり取りなのですが、センチメンタルなものでは全くなくて、最終的には、ものすごく純度の高いエモーションがあった」と評価。おふたりが実際に会ったのは数える程度で、ほぼ手紙だけで築かれた関係性に深く感動したという。
しかし、映画化には「本当にあらゆる苦労があった。原作は視覚的な要素がほとんどない。どうやって映画にするか本当に悩みました」と述べ、テキストのやりとりをそのまま映像化しても観客が楽しめないと考え、早い段階から会話劇を想定していたことを明かした。
フランスからのオファーが転機
打開策となったのは、フランスからの制作オファーだった。「フランスを舞台にした物語であれば、ある程度ずっと人がしゃべっていっても大丈夫なんじゃないか」と、原作の持つ“距離のある関係性”を再現するために、日本人とフランス人のキャラクター設定を採用。さらに、ふたりを結ぶ要素として監督自身が関心を持っていた「ユマニチュード」の概念を導入した。
これらの要素を掛け合わせることで、映画としての具体的な骨組みを見出した濱口監督は、「紆余曲折を経て、わらしべ長者的に、行き着いたところで何かにつながり、これだったら映画になるのではないかというものを集めた結果」と語った。
映画『急に具合が悪くなる』あらすじ
パリ郊外の介護施設「自由の庭」の施設長マリー=ルー・フォンテーヌは、入居者を人間らしくケアすることを理想としつつ、人手不足やスタッフの無理解に悩まされている。そんな中、日本人演出家・森崎真理と出会う。がん闘病中の真理が演出するのは、自閉スペクトラム症の孫・智樹と行動を共にする俳優・清宮吾朗の一人芝居。真理の描く演劇に勇気をもらったマリー=ルーは、同じ名前の響きを持つ偶然に導かれて交流を始める。しかし、あるとき真理は「急に具合が悪くなる」。真理の病の進行とともに、二人の関係は劇的に深まり、互いの魂を通わせ合うようになる。



