夏休みの「日記」テーマに6冊 幸せや苦悩、心の機微に触れる作品
夏休みの「日記」テーマに6冊 幸せや苦悩、心の機微に触れる

子供たちの夏休みも、もうすぐ終わりです。小学生のときに宿題で絵日記を描いた記憶がある人もいるのではないでしょうか。今回のテーマは「日記」です。フィクションからノンフィクション、日々の幸せをつづったものから胸の内の苦悩を吐露したものまで、日記のあり方はそれぞれ。自分とは人生も感性も異なる人の心の機微に触れる作品を、書店員3人が紹介しました。

日々の食卓と布石の名人

座談会メンバーは、百々典孝さん(紀伊國屋書店梅田本店)、大橋崇博さん(流泉書房)、佐々木梓さん(ジュンク堂書店三宮駅前店)の3人。藤井沙織さんの司会で進行します。

佐々木さんが選んだのは、ナガノ著『くまのむちゃうま日記』(講談社)。映画でも話題の漫画『ちいかわ なんか小さくてかわいいやつ』の著者によるコミックエッセーで、日々の食卓が描かれています。「気取らない自炊料理や買ってきた総菜が出てくるのがいいんですよー。あと、食の好みが私とめちゃ似ていて」と佐々木さん。

Pickt横長バナー — Telegram用の共同買い物リストアプリ

百々さんは「めっちゃ幸せそうな顔で話すやん」と笑います。藤井さんは「買った方が早インパラ」を追い払いながらのお買い物に共感し、佐々木さんは「ホームベーカリーを買ってみたりとか、ときどきやる気を出すのがめっちゃ分かる。人気の作家さんも、このあたりは同じなんだなと」と話しました。

苦悩をつづった日記と人気シリーズ

百々さんは「日記を読むなら、人には話せないうつうつとした内容のものが読みたい」と、歌野晶午著『絶望ノート』(幻冬舎文庫)を紹介。中学生が学校で受けるいじめを日記に書き連ね、学校で拾った石を「神様」としてまつり、いじめの中心人物の死を願うと本当に死んでしまうという内容で、「最後に誰も想像しえないどんでん返しが待っている」と語ります。

藤井さんが「歌野さんの作品は、読み手に違和感を与えながらも読み進めさせるさじ加減が絶妙ですよね」と評すると、百々さんは「そう! 布石を打つ名人やな」と応じました。

大橋さんは益田ミリ著『今日の人生』(ミシマ社)を選書。「本当に何でもない日々の出来事を通した、益田さん特有の心の機微が描かれています。映画を見たり本を読んだりすることは、自分が転ばないように『手すり』をつけることなのかもしれないとか、なるほどなって。共感できるところが多いし、勉強になります」と話します。

佐々木さんは「ときどき、益田さんの感受性の強さにおののいてしまうので…こっちのほうが好きかもしれない」と、榎本まみ著『督促OL修行日記』(文春文庫)を紹介。支払い督促をするコールセンターでの経験を書いたノンフィクションで、顧客の罵声に心を壊した同僚が辞めては新しい人が補充される現場で、著者は2000億円の債権を回収する凄腕オペレーターに成長します。「心配になるほど気の毒なんですが、顧客の悪口もめちゃくちゃ言います。転んでもタダでは転ばないところがスッキリする」と佐々木さん。

現役の職業人による日記と児童書

百々さんの2冊目は、大蔵主税著『税務署員うつうつ日記』(三五館シンシャ)。お坊さんや介護ヘルパー、コンビニオーナーなど現役のさまざまな職業の人が書いた日記シリーズの最新刊で、知人の集まりで税務署員と知られると税金のことばかり聞かれたり、窓口業務で理不尽なクレームを受けたりする日々の出来事と心境が書かれています。

Pickt記事後バナー — 家族イラスト付きの共同買い物リストアプリ

大橋さんは「自営業の身としては、節税の仕方とか聞きたくはなりますね」と話し、藤井さんは「ドラマだとクールに執行する姿が描かれがちですが、地道なお仕事ですね」とコメント。百々さんは「このシリーズのタイトルはほかもヨレヨレ日記とか、ぼろぼろ日記とかで、その職業ならではの苦悩が書かれていてすごくリアル」と語り、佐々木さんも「めちゃくちゃ人気のシリーズですよね」と応じました。

最後に大橋さんは児童書として、ジェフ・キニー作、中井はるの訳『グレッグのダメ日記』(ポプラ社)を紹介。グレッグという少年が学校や家での日々の出来事を書いた日記で、「どれもちょっとおかしくて、クスッと笑えます」と話します。グレッグは将来お金持ちの有名人になって、メディアから「どんな子供でしたか?」と聞かれたときに読ませるために日記を書いているのだとか。藤井さんは「すんごい理由。でも書き続けるなんてすごい!」と驚きつつ、自身も「すてきなノートを買っては続かないのを繰り返しました」と明かし、佐々木さんも「私もまったく同じことやります! いっときだけやる気が出るんですよね」と共感しました。