京都府京丹波町図書館の司書・湯浅真弓さん(53)が、重松清著『小学五年生』(文春文庫)を紹介する。小学5年生の「少年」が主人公の短編17編からなる小説で、入院する弟と海を見に行く少年、学級委員になりたくないけれども選ばれたい少年、2月14日にドキドキする少年、一人で初めてバスに乗った少年などが登場する。
読むと小5の自分に会える感覚
湯浅さんは40歳代の頃に初めて読んだといい、「どれも面白く、心に眠っていた小5時代の自分に会いにいったという感覚でした」と振り返る。「誰の心の中にも小学5年生の自分がいて、その自分を見つけてほしいです。ぜひ大人に読んでほしいと思います」と語る。
大人が大人の目線で子どもの話を書くと、理想の子ども像に寄りがちだが、重松さんのすごさは、自分の感情を冷静に「言語化」できない子どもの心を巧みに描く点にあるという。「子どもが生々しいというか、リアルというか。何でもない日常でも、これだけ考えているんだ、と」と感心する。
どの話も自分のことのように響く
「おじいちゃんのお葬式、初めて一人で乗ったバス。その気持ち、分かるわ、って。どの話も出てくる少年は違います。でもそれぞれが自分のことなんです。だから大人の心に響いてくるのだと思います」と湯浅さんは話す。
本との出会いで人生が変わることもあるとし、「司書になって30年ほどですが、昔は身の回りに本があるのが当たり前でした。読書をすることで、他人に共感することができて、自分の幅がどんどん広がります」と述べる。長編を読み切ることは自分を成長させ、「人や物に対する『許容力』が高くなります」と語る。
また、紙の手触りやページをめくる感覚、字の大きさなども感じながら本を読んできたが、「そんなことを説明しなければならない時代になってきました」と時代の変化を感じている。
図書館メモ
京丹波町図書館は京都府京丹波町蒲生野口38(中央館)にあり、蔵書数は約4万5000冊。中央館のほか瑞穂分館、和知分館があり、町役場内の交流ラウンジにはブックカフェ「こだち図書」、移動図書館車「めばえ号」もある。



