原爆投下を巡る言説を検証した「ヒロシマ、ナガサキ 隠された真実」(文春新書)が出版された。著者は在広島ジャーナリストの三山秀昭さん(79)。「原爆に関する間違った理解や不正確な言い伝えは多い」とする筆者が、資料や取材を基に「ファクトチェック」した一冊だ。
三山さんは、読売新聞東京本社政治部長などを経て、2011年から広島テレビの経営に携わり、社長、会長を歴任。現在はジャーナリストとして広島を拠点に取材、執筆活動をしている。
「軍都」条件説を否定
本著は「広島は『軍都』だったから原爆が落とされたのか?」から始まる。筆者は軍事施設がない京都が終盤まで候補地に残っていたことを踏まえ、「軍都は投下の条件ではなかった」と指摘。京都が候補地から外れ、広島に決まった経緯を記し、「投下は『実戦実験』だった」と論じている。
小倉から長崎へ
原爆投下が福岡県の小倉から長崎に変更された理由についても、「小倉が曇りだったから」という説をチェック。本著によると、当時小倉は晴天で、小倉と隣接する「八幡製鉄所」で煙幕を張っていたという。煙を起こした男性の証言を紹介しながら、「投下機はこの煙幕や、前日の空襲によるモヤで視界を奪われ、長崎に転じた」と結論づけた。
ユニークな都市伝説
第4章「ユニークな都市伝説」では、お好み焼きが広島で広まった理由を掘り下げたほか、「広島の原爆は落下傘につり下げられて投下された」という説も検証。これを否定し、「別の機体が観測機材などを収納した落下傘を投下した」としている。
著者の思い
このほかにも、様々なテーマで「真実」とされてきた言説に鋭く切り込んでいる。三山さんは「原爆に関する間違いや誤解が『史実』となってしまうことを懸念している。被爆者がいなくなる時が迫る中、正しい事実を伝えたい」としている。価格は税込み1100円。



