中国の古典小説「水滸伝」は、108人の豪傑らが権力に反逆する様子を描き、庶民から知識人まで幅広い人々を魅了してきた。大阪市立美術館(大阪市天王寺区)で開催中の特別展「水滸伝」は、壮大な物語がどのように生まれ、受け入れられたのかを豊富な美術品や史料とともに紹介している。
繁栄と反乱を物語る美術品
水滸伝は、12世紀の北宋に実在した盗賊、宋江らをモデルとしたフィクション。北宋の首都・開封を描いた都市風俗図「清明上河図」(17世紀)には、舟が行き交う川や、商人らでにぎわう橋の様子が生き生きと描かれ、都市の活気が伝わってくる。
繁栄の一方で、圧政に対する民衆の不満も大きかった。複雑な形をした「太湖石」と呼ばれる石はその象徴だ。皇帝が愛好した奇石を都まで運ぶ事業では、多数の労働者が動員され、石を搬出するために家が壊されることもあったという。史書には、北宋末期に宋江率いる36人が反乱を起こしたという記録がある。
物語の成立と人気
宋江らの反乱は物語として語り継がれ、明の時代に現在知られるような水滸伝の形が成立した。様々な事情でアウトローとなった者たちが梁山泊を拠点に暴れ回り、腐敗した権力に立ち向かうストーリーは、人々の心をつかんだ。明~清時代に流行したカードゲームの札「水滸葉子」(17世紀)には、ポーズを決める豪傑たちが一枚一枚に描かれ、人気ぶりがうかがえる。
水滸伝は海を渡り、江戸時代の日本でも愛読された。「新編水滸画伝 初編」(19世紀)は、戯作者の曲亭馬琴と絵師の葛飾北斎が組んだ読本。魔王が封印された伏魔殿から放射状に放たれる光の表現など、読者を物語世界に引き込むドラマチックな挿絵の数々が楽しめる。
絵師・歌川国芳の「通俗水滸伝豪傑百八人之一個」シリーズ(19世紀)は、素手で虎と戦う武松、大木をたたき割る筋骨隆々の魯智深(魯知深)など、躍動する豪傑たちの姿を派手な色遣いで画面いっぱいに描く。現存する74点が展示室に並ぶ光景は迫力がある。
現代への影響
水滸伝は後世の作家や画家の創作意欲をかき立て、漫画やドラマなどでも親しまれてきた。展示室を飾る大きな抽象画は素足で描くアクション・ペインティングで知られる画家、白髪一雄の「梁山泊」(1967年)。赤や白の絵の具がキャンバス上で激しくうねり国芳の錦絵にも通じる豪快なエネルギーに満ちている。
豪傑たちの物語は、時代や国を超えて様々に解釈され、表現されてきた。その多面性も水滸伝の魅力だろう。9月6日まで(展示替えあり)。



