行方不明だった上杉家伝来の能面「翁(おきな)面」が京都で見つかり、山形県の米沢市上杉博物館に収蔵された。11月には、この面のお披露目として、人間国宝による祝いの能「翁」が上演される。上杉家の能面を市が収蔵するのは初めてで、市所有の文化財が舞台で使用されるのも初という。
見つかった能面の詳細
同博物館によると、江戸時代の能は、武士のための芸能として幕藩体制に組み込まれ、米沢藩・上杉家でも歴代藩主が愛好し、多くの能道具を所有した。しかし明治期以降は散逸し、多くが行方不明となった。
今回見つかったのは、翁面2面と唐草蒔絵翁面箱、上杉家所蔵とわかる貼り札が残る外箱一式。京都の古美術商から、能で主役を演じるシテ方5流派の一つ、金剛流宗家に打診があり、米沢金剛会から伝え聞いた市が今年度、購入した。
公演と使用される面
11月3日に、同博物館が入る「伝国の杜」で開かれる公演では、金剛流二十六世宗家で、人間国宝の金剛永謹さんが「翁」を披露する。五穀豊穣や国家安寧などを願う演目で、2面のうち、江戸時代初期に大野出目家の洞白満喬が制作したとみられる「白式尉」を使用。長いあごひげや豊かなまゆげが特徴で、口元は動かすこともできるという。
同博物館では、2021年に開いた企画展「上杉家伝来 能面・能装束」の図録に、今回収蔵した能面の写真を「1929年(昭和4年)撮影」として紹介していたが、これまで所在は分かっていなかった。
学芸員のコメントと関連イベント
学芸員の花田美穂さんは「大切に守り継いできた翁面が、再び米沢の能舞台で祝福の舞を支えるというまれな機会で、歴史的な舞台を多くの方にみてほしい」と来場を呼びかけている。
本番に向けて、9月22日には金剛流若宗家・金剛龍謹さん(38)による、能「翁」の鑑賞講座が開かれ、約90人が参加した。自身が面を付けて初めて舞台で舞った演目が「翁」だったことや、素顔で登場し、舞った後に面を付ける流れを示し、「神の力を得て神の姿になりかわる瞬間を見てもらう信仰の意味合いが強い」などと説明。上杉家伝来の面について「使わせていただけるのはありがたい」と期待を込めた。
公演の申し込み、問い合わせは、伝国の杜(0238・26・2666)へ。