富山大学名誉教授でドラえもんアナリストの横山泰行氏は、のび太のキャラクターを通じて「ダメ人間のまま」でいることの価値について論じている。横山氏によれば、他人と比較するのではなく、自分自身の絶対的な成長を見つめることが重要だという。
他人との比較が生む苦しみ
横山氏は、同年代で活躍するアスリートや芸術家と自分を比較し、自分の人生に価値がないと感じる人々に向けて、人の能力はそれぞれ異なり、どの人の人生にも価値があると述べている。「100メートルを10秒で走ることができる人と、20秒かかる人がいたら、それ自体はどちらも同じ価値。どっちのタイムも精一杯走った結果だからです」と横山氏は説明する。しかし、10秒で走れる人が手を抜いて15秒で走るのと、20秒かかっていた人が頑張って15秒で走ったのでは、後者のほうに価値がある。つまり、人と比べた相対的価値ではなく、自分自身における絶対的価値が重要なのだと強調している。
「相変わらず」の価値
横山氏は、のび太のセリフ「坂道によわくてねえ。平らな山ならいいんだけど……」や、それに対する「まったく、お前は相変わらずだなあ」というやり取りを引用し、「相変わらず」であることの良さを指摘する。子どもが小さな失敗をしたとき、私たちはつい「相変わらず」と言ってしまうが、それが必ずしも悪いことではないと述べる。「相変わらずだけど、その相変わらずゆえにかわいいということが、世の中にはたくさんある」と横山氏は語る。
のび太の未来と自己肯定
さらに、横山氏はのび太としずちゃんの関係に触れる。しずちゃんが「いつもいっしょに宿題をやろうといって、あたしの答えをうつすだけでしょ。たまには自分でやらなくちゃだめ!」とのび太を断る場面を紹介。将来しずちゃんと結婚することを知っているのび太が、ドラえもんに「どうもいまのところ、そんなムードじゃないんだ」と相談すると、ドラえもんも「あんないい子がなんだってよりによってのび太くんなんかと。もう少しましな男がいっぱいいるのに……」と応じる。しかし、横山氏は「タイムテレビ」で見た14年後ののび太の姿から、彼が自分らしく生きることの大切さを学べるとしている。
横山氏は、のび太のように「ダメ人間」でありながらも、自分自身の成長に焦点を当て、他人と比較しないことで、結果的に強みに変えることができると結論づけている。



