京の夏、京都・柳馬場通の「阿以波」 目で涼む透かしうちわ 繊細な竹骨の美しさと老舗の改革〜職人が伝える涼の技
京の夏、京都・柳馬場通の「阿以波」 目で涼む透かしうちわ 繊細な竹骨の美しさと老舗の改革〜職人が伝える涼の技

京都市中心部の柳馬場通に店を構える京うちわの「阿以波」。築200年以上の京町家の店舗に入ると、アサガオやキキョウ、川を泳ぐ魚、七夕の短冊飾りなどを表現した切り絵が貼られた「透かしうちわ」が目に飛び込んでくる。

うちわは全面に紙が貼られておらず、透けている部分が多い。あおいで風を送るのには不向きだが、繊細な竹の骨組みが目に涼しい。部屋に飾って楽しむためのうちわだ。10代目の饗庭長兵衛さんは「暑いからと言って一生懸命あおいでいたら、見る人も暑苦しいでしょう。目で見て気分が涼しくなれば、本当に涼しくなるんです」と話す。

伝統の技と経営改革

京うちわの特徴は、工程の最後に木製の柄を付ける「差し柄」であることと、骨の数が多いこと。細く裂いた竹を薄紙に一本一本のり付けする「仮張り」によって、美しい骨組みが作られる。元禄2年(1689年)創業の阿以波は、7代目からうちわ専業となり、宮中に納める禁裏御用品も手がけた。

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透かしうちわは約40年前、先代の饗庭さんの父が百貨店と組んで「余技」として作ったものだったという。饗庭さんは大学卒業後、地元の信用金庫に就職。26歳で実家に戻り、30歳すぎで社長に就任した。それまで職人かたぎの父から経営のことを聞かされていなかったが、赤字が膨らむ帳簿を見てあぜんとしたという。

経営改革の一環として目に留めたのが透かしうちわだった。「工芸的な要素が強く、価格競争になる他のうちわと差別化できる。少人数で作っても一定の利益は確保できる」。多くの職人を抱えて大量に作るのではなく、少人数で高品質なものを作る体制に徐々に切り替えた。

透かしうちわは骨に貼る際、表と裏の切り絵をぴたりと一致させる繊細な技術が求められる。その日の湿度によってのりの乾く時間が変わったり、和紙が伸び縮みしたりするため、肌感覚で作業工程を調整しながら進めている。

季節を感じる工夫

ある時、客から「冬用のうちわはないか」と聞かれて驚いた。現代の住まいは一年中空調が利き、季節の花を生ける床の間もない。「うちわを飾って季節を感じてもらえれば」と、春夏秋冬のデザインの透かしうちわをそろえた。

近年は、うちわの骨に使う真竹や柄に使う栂などの原料調達が年々難しくなっている。以前は竹の加工を業者に依頼していたが、そこが廃業すると聞き、職人に学ばせて店で行うようになった。「私たちは作家ではなく職人なので、時代の変化や人々の需要に合わせて作っていきたい。生活の中でうちわの出番が増えてくれるとうれしいね」と饗庭さんは話す。

産地で異なる個性

東京・日本橋にあるうちわと扇子の老舗「伊場仙」社長の吉田拓史さんは、「うちわは扇子に比べ、あおいだ力に対する風量が強い。暑い屋外から戻った時や、風呂上がりに豪快にあおいで涼んでほしい」と話す。あおぐ以外にも、透かしうちわのように部屋に飾ったり、夏祭りや盆踊りに行く時に浴衣の帯に差したりするのも涼しげだ。「花火やスイカ、金魚など夏を感じる柄を選ぶのも風情があります」

同店は丸亀うちわ(香川)、京うちわ、房州うちわ(千葉)の「日本三大うちわ」を中心に扱う。全国には柿渋を塗った来民うちわ(熊本)や水にくぐらせてあおぐ水うちわ(岐阜)など独特なものもある。「産地によって作り方や素材が違い、使用感も様々。実際に手にとって、お気に入りの一枚を見つけてください」と吉田さんは話す。

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