タブレット端末を使った電子投票が地方選挙で広がっている。朝日新聞の集計では、2024年12月に実施された大阪府四條畷市長選・市議補選以降、19市町村が電子投票を実施済み、または実施予定で、過去に専用機器で実施した10市町村を上回った。紙の投票用紙に候補者の名前を書くという投票所の風景が変わり始めている。
善通寺市で県知事選に導入、開票は27分
香川県善通寺市は、8月30日に投開票された県知事選で電子投票を実施した。投票所を訪れた有権者は職員から説明を受け、タブレットの画面に表示された候補者名をタッチした。投票を終えた横田素臣さん(82)は「想像以上に簡単。ワシでもできた」と笑顔を見せた。
開票は、タブレット端末を開票所に運び、USBメモリーにデータを移し、パソコンの専用アプリで集計する。作業は前回より1時間以上短い27分間で終了し、開票作業にあたった職員も70人から20人に減ったという。
市選挙管理委員会の佐藤幸治書記長は「操作に戸惑う方が多いのではと予想していたが、思った以上にスムーズに投票していただいた。開票もこれほど早く終わるとは」と手応えを語った。
経費は約1200万円、国の特別交付税で大部分を賄う
今回の知事選にかかった経費は約1200万円で、うち約1千万円は国の特別交付税でまかなわれ、残る約200万円も今回は香川県が負担するという。佐藤書記長は「全国的に広まればコストも下がるはず。国政選挙でもぜひ導入してほしいので、地方から事例を積み上げていかないと」と期待した。
電子投票は02年に施行された特例法で、自治体が条例を定めれば地方選挙で実施できるようになった。だが、翌03年に岐阜県可児市議選と神奈川県海老名市長選・市議補選で相次いでシステム障害が起き、可児市議選は最高裁で選挙無効という判断が確定した。16年を最後に実施は途絶えていた。
規制緩和で再始動、京セラがシステム開発
復活した背景にあるのは、規制緩和だ。従来は、電子投票に使用できる投票機は専用に開発された機械に限られていたが、総務省はタブレット端末の普及を踏まえ、20年に市販の汎用機が使えるように技術的な条件を改定した。これを受けてデジタル庁が事業者に呼びかけ、京セラ(京都市)がシステム開発に乗り出した。
京セラでシステム開発責任者を務める大内康史さんによると、今年3月の宮崎県新富町議補選をきっかけに一気に広がったという。四條畷市長選・市議補選では開票時間の短縮はできなかったが、開票作業の一部を自動化し、開票システムの処理速度を5倍ほど高速化した結果、新富町議補選では電子投票の集計は22分、紙の投票用紙を使った不在者投票を含めた全体でも42分で終了した。大内さんは「『これはいける』という受け止めが広がり、一気に加速した印象がある」と話す。
人手不足にあえぐ地方自治体にとって、開票作業の人員確保は悩みの種だ。来年の統一地方選挙を前に、千葉県流山市や愛知県みよし市など、電子投票導入の条例を可決したり、条例案を議会に提出したりする自治体が相次ぐ。栃木県那須町が導入を決めた。