Suicaの会社間またがり利用、JR東海社長「検討している」 2026年度にエリア統合へ
Suicaの会社間またがり利用、JR東海社長「検討している」

鉄道会社間の広域利用が依然として課題となっている中、JR東海の前田社長は会見で他社とのまたがり利用実現に向け検討しているとのコメントを発表した。現在、どのような課題があるのかを含め、整理してお伝えする。

Suicaエリア統合で非対応区間を解消

JR東日本では、交通系ICカード「Suica」のエリア統合構想を掲げており、2026年度末までに、現在の首都圏、仙台、新潟、静岡、長野、北海道の6エリアに分かれているSuicaの利用エリアを1つにまとめる計画だ。

従来の改札システムでは、各エリアの境界部分にICカードが利用できない区間が設定されており、利用者はエリアをまたいだ乗車ができなかった。このため、境界部分を通過する際には事前に紙の乗車券を購入する必要があり、旅行者や移動の機会が多い利用者にとって不便が生じていた。

エリア統合によって境界地帯となっていた非対応区間が解消され、同一エリア内であれば改札機を通ってシームレスに移動できるようになる。JR東日本の構想では、首都圏エリアの常磐線取手駅から仙台エリアの東北本線仙台駅まで、途中で改札を出ずに在来線で移動するような利用方法が可能となる。

乗車距離制限の扱いにも注目

乗車距離の制限に関しても注目が集まっている。JR西日本の「ICOCA」では原則として営業キロ200kmまでという乗車距離制限が設けられている。これに対してJR東日本は、Suicaエリアの一体化において乗車距離制限を設けない方針を明らかにしている。これにより、利用者は距離を気にすることなく統合エリア内の駅間を自由に乗降できる。

ただし、運賃計算の具体的なルールや大都市近郊区間制度の取り扱いについては、ICカード乗車券取り扱い規約や旅客営業規約などの変更内容を含めて決定次第発表される予定だ。

会社境界をまたぐ交通系ICカードの課題

一方で、異なる鉄道会社間をまたぐICカード利用には依然として技術的および運用上の壁が存在している。

現在、首都圏のSuicaエリアと「PASMO」エリアの間では相互またがり利用が実現している。しかし、JR東海の「TOICA」エリアとの間では、定期券の有効区間内での利用を除き、プリペイドのSF残高を使用したエリアまたがり利用ができない。このため、熱海駅などの会社境界をまたいで乗車した利用者が自動改札機を通れず、駅の有人改札で精算を行うために長い列を作る状況が発生しており、混雑解消に向けた改善が強く求められている。

会社境界をまたぐ交通系ICカードの課題。JR東海の「TOICA」に関するサイトには「定期券区間内でのご利用を除き、各エリア外への乗りこしや異なるエリアをまたがってのご利用はできません」とある(出典:TOICA)

JR東日本側もこの状況を課題として認識しており、運賃計算をセンターサーバに集約する仕組みなどを活用した解決を検討しているものの、現時点で具体化された計画はない。そうした中、JR東日本の奥社長が他社に対するシステム統合の呼びかけについて言及したことが関心を集めている。

「またがり利用」については「検討中」――システム統合と会社間連携の課題

JR東海の前田社長は、2026年9月25日に実施された定例記者会見において、交通系ICカードのエリアまたがり利用およびシステム統合に関する同社の姿勢を明らかにした。会見では新幹線のサービス向上策などの発表に続き、質疑応答の中でICカードの広域利用に関する質問へ答えた。

前田社長は会社間のまたがり利用について「会社間のまたがり利用を実現するためには、他社の区間を含めた運賃計算や会社間での運賃精算の仕組み構築が必要であり、課題が多い。当社としてもエリア間のまたがり利用を可能にしていければ、それは可能にしていきたいと考えている。現在できることがないか検討しているところだ」と述べ、実現に向けた検討を行っていることを示した。

また、システム統合に関する発言において前田社長は「JR東日本から具体的な話を聞いているわけではないため現時点で回答できることはないが、利用者の利便性向上という共通の目的があるため、今後も会社間で密に情報連携をしていきたいと思っている」と説明した。

現在、JR東海では在来線駅においてTOICAに対応する自動改札機や簡易IC改札機の取り換え工事を進めている。利用者の利便性向上に向け、鉄道事業者間における今後の連携や協議の進展が注目される。