アサヒ・ニチレイの襲撃をどう防いだ? 米HP幹部が語る「ネット遮断AI」と日本攻略
アサヒ・ニチレイ襲撃をどう防いだ? 米HP幹部が語る攻略

7月にアサヒやニチレイを襲った不正アクセスは、全国の食品サプライチェーンを揺るがせ、日本企業が抱えるセキュリティの脆さを浮き彫りにした。アスクルやアサヒビールへの攻撃も記憶に新しい中、生成AIの急速な進化も相まって、PCを使うあらゆる企業にとってセキュリティ対策は「避けては通れない課題」となっている。

「最大の脆弱性は従業員」 コンサル型事業でどう変えるか

この危機に対し、ハードウェア大手の米HPはどう立ち向かうのか。来日したグレーターアジア地域シニア・バイスプレジデント(SVP)のマイケル・ボイル氏にインタビューした。単なる機器の「売り切り」を脱したコンサル型事業への変換、クラウドを介さずに情報漏えいリスクを遮断するAI PCの投入など、日本市場への勝算に迫る。

相次ぐサイバー攻撃のニュースに、多くの経営陣がセキュリティ対策への意識を高めている。ボイルSVPは「世界中の企業にとってセキュリティはビジネスの土台。コストではなく、将来に向けた積極的なIT投資と捉えるべきです」と強調する。

これは4月に日本HPの社長にインタビューした際と同じ見解だ。日系企業が多くの知的財産(IP)を持つからこそ、ボイルSVPは「日本のセキュリティ意識は確実に高まっている」と分析する。

企業の最高情報責任者(CIO)からも「アドバイスがほしい」という声が多くかかっているという。「問題発生の頻度を見ると、日本と他の地域とで、そこまで変わってはいません」と話す。世界と比べて日本のサイバー攻撃対策が進んでいないというわけではなさそうだ。

「予防」最優先の戦略 ライフサイクル全体を支援

企業がセキュリティ戦略を考える際、従業員に対する啓発や教育が重要だと説く。どれほど強固なシステムを組んだとしても、肝心な従業員の知見や意識が低ければ「その人自身が最大の脆弱性となり得る」のが現在の危機だ。こうした問題に対し、HPは営業組織の根本的な変革によって応えようとしている。

「私たちが注力しているのは、単にハードウェアを売り切るのではなく、顧客の存在課題を特定し、アドバイスできる『コンサル型営業』の育成です。購入後も未然予防やハードウェアのライフサイクル管理まで伴走することで、新たな価値を提供していきます」

具体的には、事後対応ではなく「修復より予防(Prevention)」を最優先とするセキュリティ戦略の再構築だ。例えば、マルウェア攻撃から自動復旧する自社技術「TPM Guard」や、日本市場で特に評価の高い覗き見防止技術「Sure View」(Sure Screen)など、自社が持つ多目的な保護機能を、顧客の問題に合わせて最適に組み合わせていく。ハードウェアの調達から廃棄までのライフサイクル全体に伴走・助言することで、単なる機器販売を超えたサービス(Device as a Service)領域で新たな商機を見いだす構えだ。

クラウド非接続で敵をゼロに エッジAIが変える業務プロセス

ボストンコンサルティンググループが6月に発表した「職場におけるAI活用に関する意識調査2026」によると、「生成AIを週に複数回利用する一般従業員の割合」は、世界平均の74%に対して、日本は66%だった。

「業務に求められるスキルが変化した」という問いに世界平均で72%が「そう思う」と回答。「AIが定型業務を担うことで、高度な業務に集中するようになった」という質問では「そう思う」が同じ67%に達した。

AIの影響力が増す一方、日本のAI利用率はアジア他国の90%超と比べると慎重姿勢が目立つ。だがボイルSVPは「日本企業は品質や安全性を重視するため導入に慎重なだけで、一度有用性に納得すれば爆発的にプロセスへ組み込まれていく」と前向きだ。「AIを日常の業務プロセスへ組み込むことこそが、新時代のビジネスの土台になる」と説く。

その起爆剤として注力するのが、同社が開発中の最新機能「HP IQ」だ。エッジ側に高性能な(設計図が公開された)「オープンウェイトAIモデル」を搭載し、デバイス単体でAI処理を完結させる。クラウドに接続せずにAIを使えるため、サイバー攻撃や情報漏えいのリスクを根本からシャットアウトできるという。

「HPでは、定型的な雑務をAIに任せることを『Manage』と呼び、人間が新しい価値を創出することを『Make』と呼んでいます。面倒なタスクはエッジAIに『Manage』させ、人間は本来の創意的な『Make』に集中する。これこそがHP IQがもたらす最大の価値です」