AIグラスへの不安は盗撮問題に集中しすぎると問題を見誤るのではないか:小寺信良のIT大作戦(1/5 ページ)
AIグラスへの不安は盗撮問題に集中しすぎると問題を見誤るのではないか

2026年7月13日、ディスプレイ搭載AIグラス市場で世界首位とされる中国のRokidが東京都内でメディア発表会を開催し、日本市場への本格参入を表明した。同社はクラウドファンディング「Makuake」で歴代ランキング1位となる6億3600万円以上を達成。今後1年以内に日本市場へ少なくとも10億円規模の投資(マーケティング、研究開発、開発者エコシステム支援など)を行うとしている。

AIグラスと盗撮問題の構図

近年、AIグラスに搭載されたカメラで本人の同意なく撮影され、その動画や写真がSNSに投稿される事例が世界各国で反発を呼んでいる。いわば「盗撮」の道具となるのは時間の問題だという指摘がある。これは2013年から15年まで販売されていた「Google Glass」でも起きていた。当時からすでに、公共空間で「誰かに見られること」と「撮影・保存・拡散されること」は別問題であるという議論が起こった。

Rokidの発表会では、当然ながらAIグラスを装着したスタッフが来場者を出迎え、登壇者も全員AIグラスを装着していた。そうした人々に囲まれてしまうと、確かに一般の女性は不安になるだろう。突然たくさんの報道陣に囲まれるようなものだ。容姿が撮影され、軽くSNSに投稿されたら、どんな被害者感情を受けることになるのか分からない。

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筆者の視点:本当の不安は別にある

一方で筆者はいい歳をしたおっさんであり、その形状に価値はない。意外と足が短いとか言われても多分傷つく程度だ。よって自分の姿が撮影されていても、あまり気にしていない。しかしそのことよりも、もっと別のことに対して不安になった。AIグラスの可能性である。

真の問題は、盗撮だけに焦点を当てると、AIグラスがもたらすより広範な影響を見逃すことにある。Rokidの製品はディスプレイ搭載型であり、現実世界に情報を重ねるAR機能を持つ。これにより、ユーザーは周囲の人物の顔認識や個人情報の即時取得が可能になる。公共空間でのデータ収集が常態化すれば、プライバシーの概念そのものが変容する可能性がある。

また、AIグラスは音声認識や翻訳機能も備え、会話の内容をリアルタイムで記録・解析できる。これは対人コミュニケーションの在り方を根本から変える。同意なく会話が録音・分析される社会は、言論の自由やプライバシーの侵害につながりかねない。

さらに、AIグラスにはGPSや生体認証機能も内蔵される可能性が高い。位置情報や心拍数、視線の動きなどがクラウドに送信され、企業や政府による監視に利用されるリスクがある。こうしたデータの蓄積は、個人の行動パターンや健康状態を詳細に把握することを可能にし、差別や不当な扱いを引き起こす恐れがある。

Rokidは日本市場への投資を表明したが、同社のデータ管理体制やプライバシーポリシーは明確ではない。中国企業であるため、中国政府によるデータアクセスの可能性も懸念される。日本市場に参入する際には、透明性の高い運用と厳格なデータ保護が求められる。

AIグラス技術はまだ発展途上だが、その普及は避けられない。社会全体でプライバシーと利便性のバランスを議論し、適切なルールを整備する必要がある。盗撮問題だけに目を向けるのではなく、もっと広い視野でAIグラスの影響を考えるべきだ。

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