国際サッカー連盟(FIFA)は、ワールドカップ(W杯)北中米大会の開幕から決勝前日までにオンライン上の5300万件の投稿を精査し、700万件以上を誹謗中傷と判断したと発表した。前回の2022年カタール大会の約47万件から14倍に増加した。
山口教授の分析
SNSに詳しい国際大学グローバル・コミュニケーションセンターの山口真一教授は、AIの進化や自動翻訳の影響とともに、国際大会特有の構造的理由も問題投稿の要因に挙げる。
山口教授は「これだけの規模を可視化し、公表したこと自体は評価したい。前回大会に比べ、参加チームは32から48、試合数も64から104に増えたため、単純に比較することはできない。AIの検知精度も飛躍的に向上しており、『実際に増えた分』と『見えるようになった分』は、切り分けて考える必要がある。ただし、それらをすべて差し引いても14倍は大きな増加だと感じる」と述べた。
国際大会で攻撃的投稿が増える構造的理由
山口教授は、国際的なスポーツイベントで攻撃的な投稿が起きやすい構造的理由として3点を指摘した。
第一に、勝敗という強い感情が瞬間的に爆発すること。とりわけ試合中や試合直後の「かっとなった状態」は、冷静さを欠いた攻撃的な投稿を生みやすい。
第二に、「自国」対「他国」という対立構図が最初から存在するため、ナショナリズムと結びついて、個人への批判が国や民族への攻撃にエスカレートしやすいこと。
山口教授の研究でも、攻撃的な投稿をする人の動機の大半は「許せない」などという個人的な正義感であり、本人は気づかずに誹謗や中傷をしているケースも少なくない。また、トレンドに上がるような話題や攻撃的な表現の投稿ほど閲覧数を稼ぎやすく、SNSのアルゴリズムもそういった投稿を優先的に表示することも背景にある。
自動翻訳の影響
今大会では、X(旧ツイッター)で自動翻訳による投稿も多く見られた。翻訳ボタンを押さずに、対戦相手国の選手や関係者を直接攻撃する内容が拡散された可能性がある。



