タイ外務省は2日、インターネット上で拡散している同国のマハ・ワチラロンコン国王(73)にフランスのエマニュエル・マクロン大統領がひざまずいている画像について、AI(人工知能)によって生成されたフェイク(偽物)だと発表した。この画像は、タイ国王夫妻のフランス公式訪問中に撮影されたかのように見せかけられていたが、実際の儀式とは異なるものであることが確認された。
国王訪問の背景と実際の儀式
ワチラロンコン国王とスティダ王妃は今週、フランスとの国交樹立170周年を記念して同国を公式訪問した。タイ国王のフランス公式訪問は1960年以来となる。タイメディアの報道によると、大統領官邸(エリゼ宮)で開催された晩餐会の席で、マクロン大統領がワチラロンコン国王にフランスの最高勲章であるレジオン・ドヌール勲章グランクロワ(一等)を、スティダ王妃には国家功労勲章グランクロワ(一等)を授与した。
しかし、タイのインターネット上で広く拡散した画像では、マクロン大統領がこれらの勲章を授与する際にひざまずいているかのように見える。この画像は1日にタイ語のフェイスブックページに投稿され、翌日までに4万件以上の「いいね!」を獲得し、2000回以上シェアされた。さらに、軍部支持やナショナリスト的なコメントを頻繁に発信し、200万人以上のフォロワーを抱える著名なページにもシェアされた。
SNS上の反応と拡散の実態
コメント欄には、「フランスはわが国よりもはるかに裕福で発展しているにもかかわらず、それでもわが国をこれほど重んじてくれることを大変うれしく思う。深く感動している」といった声や、マクロン大統領について「とてもチャーミングだ」「タイ国民の心を完全につかんだ」といった書き込みが見られた。これらの反応は、画像の信憑性を疑うことなく広まったことを示している。
だが、タイ外務省の職員は、この画像がAIによって生成されたフェイクであることを確認。AFPに対し、「エマニュエル・マクロン氏がひざまづいて勲章を授与している画像は一切存在しない」と断言した。
AFPのファクトチェックによる検証
AFPのファクトチェック部門がこの画像を米オープンAIの画像検証ツールにかけたところ、「オープンAIのツールによって生成されたものである」ことが確認できた。さらにAFPは、問題の画像のスティダ王妃に似た女性の服装と、公式訪問中にAFPが撮影した本物の王妃の写真とを比較し、決定的な相違点を発見した。
また、タイ外務省が公開した勲章授与式および晩餐会の公式写真をAFPが確認したところ、マクロン大統領がワチラロンコン国王の前でひざまずいているものは一枚も存在しなかった。これらの検証結果から、画像が完全な偽造であることが明らかになった。
影響と今後の課題
今回の事件は、AI技術の進歩により、現実と見分けがつかないフェイク画像が容易に生成され、SNS上で急速に拡散する危険性を改めて浮き彫りにした。特に、外交儀礼や国家元首に関する情報は、国際的な誤解を招く可能性があるため、注意が必要である。タイ外務省は、公式情報の確認を呼びかけるとともに、AI生成コンテンツに対するリテラシー向上の重要性を強調している。



