政府は、生成AI(人工知能)の学習データに著作物を権利者の許可なく利用できる新たな法律を制定する方針を固めた。年内にも関連法案を通常国会に提出する見通しで、文化庁と経済産業省が連携して具体化を進める。現在の著作権法では、AI学習のための著作物利用は「非享受目的」であれば認められているが、新法ではさらに広範な利用を可能にする。一方で、権利者への適切な補償の仕組みについても併せて検討する。
背景:AI開発競争の加速と著作権問題
生成AIの急速な普及に伴い、学習データとしての著作物利用が世界的な課題となっている。日本では、2023年に著作権法が改正され、AI学習目的での著作物利用が一定条件下で認められた。しかし、EU(欧州連合)ではAI規制法(AI Act)で学習データの透明性を義務付けるなど、各国で規制が強化される動きもある。政府関係者は「日本のAI開発競争力維持のため、柔軟な法整備が必要」と説明する。
新法の概要:無断利用を原則化
新法では、AI学習目的であれば、著作権者の許諾なく著作物を利用できることを明確化する。対象はテキスト、画像、音声などあらゆる著作物で、生成AIの学習に広く活用できるようにする。ただし、利用に当たっては、権利者の利益を不当に害さないよう、一定のルールを設ける。具体的には、学習データとしての利用が著作物の市場価値に影響を与える場合などは、権利者が利用の停止を求められる仕組みを検討する。
補償の仕組み:権利者への対価支払い
新法のもう一つの柱が、権利者への補償だ。政府は、AI開発企業などが著作物を学習データとして利用する際、権利者に対して適切な対価を支払う仕組みを導入する方針。具体的には、著作権団体を通じた一括補償や、AI事業者への課金制度などが検討されている。文化庁の有識者会議では「権利者の保護とAI開発の促進のバランスが重要」との意見が大勢を占めた。
今後のスケジュール
政府は、年内にも文化庁と経産省が共同で新法の骨子案をまとめ、来年の通常国会に法案を提出する予定。早ければ2027年にも施行される見通しだ。また、新法の施行に先立ち、ガイドラインを策定し、AI事業者への周知を図る。政府は「日本のAI産業の国際競争力を高めつつ、クリエイターの権利も守る制度設計を目指す」としている。
国内外の反応
この方針に対し、AI開発企業からは「学習データの自由度が高まり、研究開発が加速する」と歓迎する声がある一方、出版業界や漫画家など著作権者側からは「無断利用が拡大すれば、クリエイターの収入が減る」と懸念の声も上がっている。政府は今後、パブリックコメントなどを通じて意見を募り、制度の詳細を詰める方針だ。



