「Copilot+ PC」ブランドは終了したのか? MicrosoftとPCメーカーが静かに撤退を開始
「Copilot+ PC」ブランド終了か? MicrosoftとPCメーカーが静かに撤退

ハワイ・マウイ島で開催されたQualcommのイベント「Snapdragon Summit 2026」の取材中、気になる記事が目に留まった。Windows Centralのザック・ボーデン氏が報じた「The Copilot+ PC brand is dead: Microsoft and PC makers quietly pull back on tarnished Windows 11 AI PC branding」という記事だ。

内容は、MicrosoftでSurface担当CVPを務めるブレット・オストラム氏がインタビューで、「(2026年に販売されたSurfaceは)Copilot+ PCと呼んでおらず、一方でそれらは全て以前まで『Copilot+』と呼ばれていた基準を満たしている」とコメントしたというもの。つまり、同社としてはもう「Copilot+ PC」名義でのブランディングやマーケティングは行わないというわけだ。

「Copilot+ PC」の誕生と静かな終焉

もともと、Copilot+ PCが発表されたのは2024年5月のこと。40TOPS以上のNPUと16GBメモリを搭載するなど、当時としてはややハイエンドに近い最低性能基準を設け、AI時代にふさわしいWindows PCとするべく大々的にアピールされたのが始まりだ。

このCopilot+ PCに関するブランディングは、2024年から2025年を通じて行われたものの、ボーデン氏によれば2026年以降は「同ブランド」を冠したSurfaceは1台もリリースされておらず、Copilot+ PC対応PCに関する情報をまとめたページにもその記述が記載されていないという。その上でオストラム氏に同件を尋ねたところ、冒頭の回答が得られたという流れだ。

Qualcomm幹部の見解とMicrosoftの決定権

また、ボーデン氏はQualcomm Technologiesでコンピュート・ゲーミング担当SVP兼GMを務めるケダー・コンダップ氏に質疑応答のセッションで同様の質問をしたようだ。その回答は「『Copilot+ PC』の目的は『NPU』の体験を提供することであり、40TOPSといった特定の基準や指標を持つ特定カテゴリのデバイスの定義であり、その観点から言えば現在は『Copilot+ PC』という言葉がなくても同様の体験を提供可能になっている」だったという。

後にコンダップ氏にインタビューする機会を得たため、この記事中にあったコメントの意図を確認してみた。すると、もともとの(ボーデン氏への)回答の意図は「Snapdragon Xシリーズを用いた、より広範なエコシステムへのサポートという文脈での発言だった」と補足しつつ、「NPUとAI体験を提供しているという部分は事実だが、『Copilot+(PC)』に関するブランド戦略や呼称そのものの話は、間違いなくMicrosoft側の決定事項だ」と述べ、あくまでMicrosoft側にその意図を確認すべきだと線引きを行っている。

Copilot+ PCが発表された当時、「NPU単体で40TOPS以上の性能」という条件を満たすのはQualcommのSnapdragon Xシリーズしか存在せず、半年以上の期間、他社に先駆けて優位を受けたベンダーである点は間違いないが、それも含めてブランディングの決定権や判断はMicrosoft側にあるというわけだ。

市場への影響と今後の見通し

最も、オストラム氏やコンダップ氏が指摘するように、現在販売されているPCの多くは従来、Copilot+ PCの名称で定義されたPCのスペック基準を満たしており、ブランディングの後継なしで「最先端の」AI対応をうたうことが可能だ(全てのPCではない点に注意)。

少なくとも、筆者が2026年の夏ごろに日本国内の家電量販店を回っていた範囲ではCopilot+ PCの名称を冠して製品アピールが行われていたものの、以前ほど積極的な差別化が行われているという印象は受けなかった。おそらくは、比較的ローエンドのカテゴリーも含めて今後2〜3年以内には世間で稼働するWindows 11 PCの多くがCopilot+ PCに相当する性能を持つことになるだろう。

情報によれば、Copilot+ PCの拡販とAI関連マーケティングのために、Microsoft側から多くのリベートが販売店やパートナー各社に集中投下され、同時にQualcomm側からも支援金が提供されていたという話も聞こえていた。2年の歳月を経てこの活動が一段落し、Copilot+ PCという名前が消滅したとしても自然な形でその影響が市場に溶け込んだと考えるのが正しいのかもしれない。