2025年8月に実施したAMD幹部へのインタビューで応対したSr. Director of Client Product ManagementのTravis Kirsch氏が2026年に再来日し、再びインタビューに応じた。同氏はRyzen 9 9950X3D2の市場投入背景や3D V-Cacheの戦略的役割、AM5プラットフォームの将来について語った。
Ryzen 9 9950X3D2投入の背景と3D V-Cacheの進化
前回のインタビューで「X3D製品で両方のダイに3D V-Cacheを搭載すればキャッシュの非対称構成の問題は解決するのでは」と質問したところ、同氏は「3D V-Cacheは高価な技術であり、両方のダイに搭載しても価値は提供できない」と回答していた。しかし、その後Ryzen 9 9950X3D2が発表されたことについて、同氏は「理由の一部はユーザーの要望によるものだ。当初は主にゲーム関連のデータに注目しており、ゲームの処理は1つのCCD内で完結するため、両方のCCDに3D V-Cacheを載せることは理に適っていなかった」と説明した。
その上で、「AMDは常にソフトウェアが活用できるようになる前に技術を開発してきた企業だ。64bit化やデュアルコア、Threadripperでの16コアCPU導入も同様だ。現在のメリット以上に大きな可能性がその先に秘められている。AIの台頭により、今では非常に理に適っている」と述べた。
AIにおける3D V-Cacheの効果については、「メモリ需要が高い場所であればどこでもAIのパフォーマンスを向上させることができる」とし、容量不足への効果については「容量に関してはそうかもしれないが、いくつかのメリットは見いだせる」と語った。
Ryzen 7 7700X3Dの戦略とメモリ市場の変化
Ryzen 7 7700X3Dが7月に329ドルで発売されたことについて、同氏は「より幅広い市場に選択肢を提供するためだ。コンポーネント市場には経済的な余裕の差があるユーザー層が存在し、できるだけ多くのユーザーにソリューションを提供したい」と説明。また、Ryzen 7 9700X3DではなくRyzen 7 7700X3Dを選んだ理由については、「Raphaelベースの社内在庫を活用する機会があったためだ」と述べた。
DRAM供給のひっ迫や価格変動について、同氏は「市場の価格動向は皆が動いている結果であり、我々にできることは無い。いかなる状況でも消費者に選択肢を提供することに集中している」と語った。3D V-Cacheについては、「メモリの状況に合わせて調整するための方法の1つとして、現在非常に重要だ」と位置づけた。
AM4特別版とローエンド市場の見解
Ryzen 7 5800X3D 10th Anniversary Editionについて、同氏は「従来のRyzen 7 5800X3Dの生産は終了しており、Fabでも生産は行っていない。Lisa氏が復活のアイディアを提起した1人だ。AM4を約10年間使ってくれたユーザーへの最後の贈り物であり、DDR4システムにPCをアップグレードする最後のチャンスを提供するものだ」と説明。メモリ市場の変化への対応策ではないと強調した。
Ryzen 3のSKUが少ないことについては、「コンポーネント市場におけるRyzen 3の市場規模はそれほど大きくない。低価格帯を望む顧客向けにいくつかのSKUは提供するが、主な焦点ではなく、プレミアムで高性能なゲーミング市場が主戦場だ」と述べた。歴史的にAMDはプレミアムとバリューの両方を提供してきたとの指摘には、「Athlonの時代はコンポーネント市場の大きな部分を占めていたが、今ではノートPCの台頭によりそれほど大きな市場ではなくなった」と答えた。
AM5の2029年サポートと次世代プラットフォーム
AM5が2029年までサポートされることについて、同氏は「プラットフォームの寿命はエンドユーザーにとって何よりも重要だ。新しいソケットを発売するたびにマザーボード価格が安定するまで時間がかかるため、煩雑な刷新はパートナーやユーザーにとって良くない」と述べた。AM6の登場時期については「いつになるかは判らないが、技術的な制約により変更を余儀なくされた時点で導入する」と語った。
DDR5の高速メモリ対応については「現在のプラットフォームでは6000MHz台の速度が最適だ。メモリクロックとプロセッサクロックの比率の問題がある」と説明。CUDIMMやCAMM2、HUDIMMへの対応については「理にかなったタイミングがあれば検討するが、大きな機会は見出せていない」とした。
次世代Ryzenでのサーバとのダイ共有については、「AMDの戦略はさまざまな事業分野間でアーキテクチャを共有することにあり、理に適う場面ではサーバともダイを共有している」と述べる一方、Zen 6が関係するかについては肯定も否定もできなかった。
Ryzen AI HaloとローカルLLMの重要性
Ryzen AI Haloについて、同氏は「我々の戦略にとって非常に重要だ。AIに関してはオープンソースを採用しており、できるだけ多くの開発者に製品を開発してもらいたい。ローカルAIの強力なユースケースも存在し、同じソフトウェアスタックで両方をマネジメントする戦略を取っている」と語った。
デスクトップ向けNPU搭載の可能性については「お答えできない」としつつ、チップセットについて「常にI/Oの改善に取り組んでいる」と述べた。ローカルLLMにおいてRyzen AI MaxがGPUアクセス可能なメモリ容量で優位性を持つとの指摘には、Threadripper Halo Stationを例に挙げたが、コンシューマ向けの価格帯についてはコメントを控えた。
インタビューはクワイエット・ピリオド中に行われたため、「I can't speak」という回答が多かったが、同氏は消費者の選択肢を重視する姿勢を一貫して示した。