東京都心から南に約1000キロ離れた小笠原諸島で6月、水族館や大学の研究者、地元有志らが行ったシロワニの潜水調査に同行した。性格は比較的おとなしく、ダイバーや観光客に人気のサメだ。
台風で4日間足止め、調査は決行
今回は1~2日に母島列島で調査を実施。3~6日は、父島の北に位置する聟島列島(無人)に向かい、船中泊をしながら調査する予定だった。だが本州を通過していった台風6号の影響で、本土から遠く離れた海でも、波やうねりが収まらない。
待つこと4日。6月7日、日帰りで聟島列島南の嫁島の調査を決行した。父島を出港したのは午前6時半、現地の海流が弱い時間帯を狙って北に向かう。
午前8時過ぎ、大きなアーチ型の岩が目印のポイント「マグロ穴」に到着した。イソマグロが群れるダイビングポイントで知られ、その底にシロワニもいるという。
水深19メートルで3匹確認、移動記録も
ダイバーと一緒に船から海に飛び込むと、透明な海で複数のイルカが出迎えてくれた。インカの群れを横目に海底へと進むと、水深19メートルの岩陰で、潜む2匹のシロワニを見つけた。
全長2メートル弱と小型だが、半開きの口から鋭い歯がのぞく。2匹はこちらをうかがうように、ゆっくり旋回していた。その後もう1匹を見つけ、マグロ穴では計3匹を確認した。
1年前に海底に設置した受信機を、ダイバーが回収した。浮上後、船上で受信機のデータを確認すると、23年に父島で発信器をつけた1匹が、約50キロ離れた嫁島まで移動していた記録が残っていたことがわかった。
確かな記録は3件だけ、生態の謎
小笠原の海を案内した同村のダイバーで写真家の南俊夫さん(56)は、「知れば知るほどミステリアスなサメだ」と話す。
見た目はいかついが、人が驚かせなければ通常、漁やダイビングの邪魔もしない。水深10~30メートルの岩礁や洞窟、沈没船に潜むことが多いが、父島の漁港や桟橋のある浅い海底にも姿を現す。一方で、定着した岩場から急にいなくなってしまうなど、予測しにくい行動もする。
日本でいち早く1995年にシロワニを導入した水族館「マリンワールド海の中道」(福岡市)の中村雅之顧問(66)も不思議な魅力に取りつかれた一人だ。「世界では大陸の沿岸域に分布するのに、どうやって海洋島の小笠原に来たのか。正確な生息数を含めて、調べる価値があると思った」と語る。
本土では縄文時代の九州や北陸、関東などの貝塚から歯が出土しているが、中村さんによると、国内の確かな捕獲記録は1907、37、69年の3件しかない。大正時代には長崎で水揚げされた記録があり、東シナ海では67~68年の学術調査で複数捕獲されたが、本土の沿岸部からいつ消えたのかも謎だ。サメは世界各地で危険な魚とみなされ、サメ狩りに遭ったり駆除されたりしやすい。保護しようにも、正確な生息数などの基本データさえ乏しい。



